[2022_10_06_05]民事調停完勝−上関原発.中国電力大失態 10月5日上関原発ボーリング調査をめぐる民事調停が開かれる 中国電力が法律論争から逃げ、調停は不成立に 自ら申し立てた民事調停で「法律論争に応じない」という大失態 今後、中国電力が提訴することも困難 連載「権利に基づく闘い」その32 熊本一規(明治学院大学名誉教授)(たんぽぽ2022年10月6日)
 
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民事調停完勝−上関原発.中国電力大失態 10月5日上関原発ボーリング調査をめぐる民事調停が開かれる 中国電力が法律論争から逃げ、調停は不成立に 自ら申し立てた民事調停で「法律論争に応じない」という大失態 今後、中国電力が提訴することも困難 連載「権利に基づく闘い」その32 熊本一規(明治学院大学名誉教授)

 ◎ 10月5日、予定通り、柳井簡易裁判所で午後1時半から上関原発ボーリング調査をめぐる民事調停が開かれました。
 午後1時半からは、まず中国電力と調停委員との話し合いが始まりました。
 祝島島民の会側(祝島島民の会の清水敏保会長,木村力会員,熊本一規特別会員,周南法律事務所の中村覚弁護士,田畑元久弁護士)は待合室で待機していました。
 中国電力と調停委員との話し合いは、わずか十数分で終わり、午後1時43分頃、調停室に来るよう呼びに来られ、祝島島民の会側と2名の調停委員の話し合いが始まりました。
 予め9月28日付けで答弁書と「中国電力への質問状」を柳井簡易裁判所に提出していたのですが、まず、中村覚弁護士から答弁書に即して説明をし、次いで私のほうから「中電への質問状」に即して説明しました。
 質問状の説明の際には、補足資料としてレジュメ及び資料1公共用地の取得に伴う損失補償基準要綱,資料2原龍之助『公物営造物法』,資料3中電との論争経緯,資料4上関原発と漁業権区域模式図,資料5浜本幸生『早わかり「漁業法」全解説』を配布して説明しました。
 説明後、調停委員は、「中国電力は、現場で調査を妨害しないで欲しいと伝えるために調停を申請しただけで、法律論争をする気はないとのことです」と言いました。
 法律論争をする気がなければ、いったい何のために裁判所に調停を申し立てたのか、わけが分かりません。
 祝島島民の会側がそう主張したところ、調停委員は、「調停は双方が合意しなければ成立しないのだから、中電が法律論争をする気がなければ、当然調停は不成立になりますが、今日、調停不成立という結論を出してもいいかどうか、中電に電話で問い合わせてみます」と言って、調停室を出て電話のほうに向かいました。

◎ 祝島島民の会側は、調停委員が別室で中電に電話している間、再び待合室に戻って待機していたのですが、10分程度で呼び出され、調停室に行ったところ、今度は、裁判官の調停委員長(調停委員は3名居るのですが、うち一人は裁判官で調停委員長を務めます)も現われて、調停委員長が「調停は不成立になりました」と宣言しました。
 以上で調停はあっさり終わりました。
 要するに、中国電力が法律論争から逃げたため、調停が不成立になったということです。法律論争から逃げたのは、論争しても負けると判断したからと思われてもやむを得ないですし、また、そう思うほかないでしょう。要するに、白旗を挙げたということです。

◎ 中国電力としては、今後、訴訟を起こすという手がないわけではないですが、訴訟になっても論点は民事調停の論点と同じになりますし、また、中村弁護士によれば、判決や決定や和解(総称して「債務名義」というそうです)を経た事案について、さらに訴訟で争うことは、かなり困難だということです。ですから、訴訟を起こすのは、内容の上でも訴訟技術の上でも難しいということになります。
 ともあれ、常識でもわかることですが、自ら民事調停を申し立てておいて、反論されると「法律論争には応じません」と言ったことは、中国電力の大失態であり、今後、上関原発を推進するうえで大きな汚点になったことは間違いありません。
 私は、これまでの中国電力との論争経緯(資料3)を踏まえれば「よく民事調停を申し立てたものだ」と呆れていたのですが、中国電力顧問弁護士も、民事調停を申し立てて初めて真剣に「埋立と漁業権」を勉強して、ようやく理解した、ということだと思います。

注:中国電力の調停申立書、祝島島民の会側の答弁書,中国電力への質問状,及び補足資料のレジュメ,資料1〜5は、筆者の ホームページ に掲載しています。
KEY_WORD:上関原発計画_: