[2022_09_16_01]6.17最高裁判決に対する関西訴訟団の抗議声明(アメプロ2022年9月16日)
 
参照元
6.17最高裁判決に対する関西訴訟団の抗議声明

       2022年9月15日

       原発賠償関西訴訟原告団
       原発賠償関西訴訟弁護団
       原発賠償関西訴訟KANSAIサポーターズ

6月17日最高裁判決に対する抗議声明

 2022年6月17日、最高裁判所第二小法廷は、福島第一原発事故の被害者が提起した生業訴訟、群馬訴訟、千葉訴訟、愛媛訴訟の4訴訟において、国の責任を認めないとする判決を言い渡した。
 多数意見は、規制権限不行使を理由として国賠法上の責任を負わないとして国の責任を認めなかった。その論拠は、経済産業大臣が規制権限を行使したとしても、東京電力は「長期評価」に基づき試算した津波と同様の津波に対応する防潮堤を設置した蓋然性が高く、他方、本件津波とこの試算津波とは挙動が異なるために、本件事故を防止できなかったから、というものであった。
 適切に規制権限を行使したものの、それでも事故を防止できなかったというのであればともかく、何もしていないのに、どうせ対策をしても事故は防げないから責任を免じるという論理は、あまりに稚拙であって説得力を欠くと言わざるを得ない。
 上記4訴訟において、原告は、福島原発事故に至る我が国の原子力行政のありようを裁判の俎上にのせ、国や東京電力の対応は、万が一にも原子力災害を起こさないという原子力規制法令の趣旨・目的にもとるものであることを指摘してきた。
 最高裁判所には、過去の原子力行政が、万が一にも原子力災害を起こさないという法令の趣旨・目的に適うものであったのかについて判断することが要請されていたのである。
 ところが、最高裁判所は、この点について触れることなく、規制権限を行使していたとしても福島原発事故を防ぐことができなったというレベルの低い論理でもって、長期間規制権限の行使をしてこなかった国を免責したのである。
 これは、最高裁判所に求められている市民の司法判断への期待を裏切る不当かつ不公正な判断である。
 今回の判決は、原子力安全規制法令の趣旨・目的について検討することなく、事故前における国の原子力行政を追認した。
 事故を防止することができない状況を追認することでは、今後も同種の事故を防ぐことはできない。
 国の規制権限不行使の怠慢を追認する判断は誠に遺憾であって、到底受け入れられるものではない。
 他方で、本判決には、三浦守裁判官の反対意見が付されている。
 三浦反対意見は、原子力安全規制法令の趣旨・目的を丁寧に説明したうえ、「長期評価」を規制権限行使の基礎とすることの合理性を認め、多数意見が言外に敷地南東側に限定した防潮堤の設置位置について、敷地東側にも防潮堤が設置されたであろうことや、区画や建屋の水密化等の対策が求められ、実際にそのような対策をとったであろうとし、これにより本件事故は避けられたとして、国の責任を認めるべきであるとするものであった。
 三浦反対意見は、長期評価を前提とする事態に即応し、保安院及び東京電力が法令の趣旨・目的に従って真摯な検討を行っていれば、適切な対応を取ることができ、それによって本件事故を回避できた可能性が高いと述べ、本件地震や本件津波の規模等にとらわれて、問題を見失ってはならないと多数意見を厳しく批判している。
 われわれ原発賠償関西訴訟団(原告団・弁護団・KANSAIサポーターズ)は、最高裁判決の多数意見に対する抗議の意思を示すと共に、三浦反対意見に示された明快な論理を支持するものである。
 多数意見を覆す判断を勝ち取るまで市民のみなさんと共に戦い抜くことをここに宣言する。
KEY_WORD:原発避難訴訟_最高裁_国責任_統一判断_:FUKU1_: