[2022_09_06_07]使用済みMOX燃料は「ごみ」となる運命か 再処理に技術的な壁(毎日新聞2022年9月6日)
 
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使用済みMOX燃料は「ごみ」となる運命か 再処理に技術的な壁

 使用済み核燃料を原発で再利用する政策をとっているフランスや日本で、政策の行き詰まりが表面化している。プルトニウムとウランを混ぜた「MOX燃料」を繰り返し利用する技術が確立できないのだ。使用済み核燃料の置き場に困ったフランスは、巨大な中間貯蔵プールの建設を計画し、最終貯蔵も見据えている。
 日本の原子力政策には「全量再処理」という金科玉条がある。「ウラン資源の有効活用」を目的に、すべての使用済み核燃料は必ず再処理してプルトニウムを分離し、再利用する原則。これを墨守すれば、プルサーマルと呼ばれる燃焼を終えた使用済みMOX燃料も再び再処理する必要がある。しかし、プルトニウムを利用する体系「核燃料サイクル」で日本がお手本とするフランスでさえ、ちゅうちょする。なぜか。

 いまだ実験レベル

 「使用済みMOX燃料には使用済みウラン燃料の数倍のプルトニウムが含まれているため、大きく二つの問題が生じ、再処理を妨げる」と説明するのは、日本原子力研究所(現・日本原子力研究開発機構)でプルトニウムを研究してきた木原壮林・京都工芸繊維大名誉教授。

 最初の問題は、MOX燃料に含まれる多量のプルトニウムを燃やすと、溶解しにくい物質の割合が増え、化学的に処理(再処理)しにくくなることだ。具体的には、化学的に安定な性質を持つ白金族元素のパラジウム、ロジウム、ルテニウムが増える。難溶性のプルトニウム酸化物もできる。
 二つ目に、多量のプルトニウムを扱うと臨界事故の危険性が高まることがある。冷却不足で溶液が蒸発し濃縮されると、プルトニウムが集まり、核分裂の連鎖反応が意図せずに始まる。2人が被ばくで死亡した茨城県東海村の臨界事故(1999年9月)はウランの溶液が一定量以上に達して臨界となったものだった。
 最先端のフランスでさえ使用済みMOX燃料の再処理は、実験レベルでしかない。対策として、少しずつ処理したり、ウランで薄めたりして試みられているが、効率が悪く、実用化にはほど遠い。…(後略)
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