[2022_09_07_05]IAEA報告書、「重大事故の発生」改めて警告(産経新聞2022年9月7日)
 
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IAEA報告書、「重大事故の発生」改めて警告

 【ロンドン=板東和正】ウクライナに侵攻したロシア軍が占拠する南部ザポロジエ原発に関する国際原子力機関(IAEA)の報告書は、原発が直面する状況に「重大な懸念」を示した。放射性物質が拡散する兆候は現時点で見当たらないとしたものの「重大な事故が起きかねない」(ゼレンスキー大統領)現況を改めて警告した形だ。
 英紙ガーディアンなどによると、IAEAのグロッシ事務局長は原発の状況について「火遊びをしているようなもの」「恐ろしく壊滅的な出来事が発生する恐れがある」と発言した。
 ウクライナ国営原子力企業エネルゴアトムは5日、露軍の砲撃により同原発で唯一稼働中の原子炉6号機が外部の送電網から切り離されたと発表。原発の安全維持のための電力は原子炉6号機から供給されていたが、電源設備の損傷は原子炉の冷却を不可能にし、炉心溶融(メルトダウン)を起こすリスクがある。2011年の東京電力福島第1原発事故は「冷却システムが働かなくなったことが要因」(グロッシ氏)とされ、警戒感は強まっている。
 また、今回の報告書では、原発で勤務するウクライナ人職員の労働環境の改善にも言及した。職員は戦闘下の重圧の中で勤務しているだけでなく、一部の職員が露側の都合の悪い情報を調査団に告発することを阻もうとする露治安要員に脅迫された疑惑もある。ウッドワード英国連大使は原発職員について「もはや労働者ではなく、銃口を向けられた人質だ」と指摘した。
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