[2022_08_31_02]海抜マイナス95メートル、慶州の放射性廃棄物処分場の洞窟施設に行ってみた(ハンギョレ新聞2022年8月31日)
 
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海抜マイナス95メートル、慶州の放射性廃棄物処分場の洞窟施設に行ってみた

 海抜マイナス80〜130メートルの地下の6個のサイロに 低レベル放射性廃棄物のドラム缶2万5578本を貯蔵 運用開始から7年で全容量の1/4が埋まり ドラム缶12万5千本規模の表層処分場も着工 原発使用済み核燃料の飽和時点が迫っても 高レベル処分場選定の議論は進展なし

 8月26日、韓国原子力環境公団が準備したバスに乗り、低い山の中腹にあるトンネル入り口から入りしばらく走った。間もなくトンネルの天井に「海抜マイナス95M・入口から1450M」と書かれた表示板が見えた。韓国国内で発生する中・低レベル放射性廃棄物の終着点である地下洞窟処分施設に到着した。バスが停まったところは、表示されているとおり海抜マイナス95メートル、海抜30メートルのトンネル入口から地下に125メートル下ったところだ。
 洞窟処分施設は、文武大王水中陵からほど近い慶尚北道慶州市文武大王面奉吉里一帯の206万平方メートルにある中・低レベル放射性廃棄物処分施設の1段階施設だ。200リットルの放射性廃棄物ドラム缶10万本を収納できる規模で建てられ、2015年から運用されている。バスから降りてトンネルの奥に歩いて入ると、左右に短いトンネルが掘られている。放射性廃棄物を貯蔵するサイロ(SILO)は、中央トンネルから分岐した3対のトンネルの両端に1つずつ、計6個が設置されている。
 高さ50メートル、内径23.6メートルの巨大な円筒形のコンクリートサイロ6個には、26日現在で放射性廃棄物ドラム缶2万5578本が貯蔵されている。運用開始から7年で全体貯蔵容量の約4分の1ほどをすでに使ったわけだ。放射性廃棄物は、放射能の濃度と熱発生率によって、使用済み核燃料の高レベル、原発解体の過程で多く発生する中レベル、放射能濃度が低い低レベルと極低レベルに区分される。洞窟処分施設には、そのうち原子力施設の放射線管理区域で作業者が使用した作業服や手袋などの低レベル放射性廃棄物が保管されている。現場を案内してくれた原子力環境公団のチョ・ビョンジョ疎通協力団長は「洞窟処分施設は中レベル放射性廃棄物もドラム缶3万本を貯蔵する計画だが、排出者が物量の多い低レベルから送ってくるため、まだ中レベルの貯蔵までは行われていない。今後、原発の解体がなされれば、中レベルの廃棄物が多く発生し搬入されると思う」と話した。
 ドラム缶に密封された状態で処分場に到着した放射性廃棄物はひとまず、引き受け検査施設で検査を受ける。ここで表面放射線量率の測定、X線検査、核種分析などの検査を通過した放射性廃棄物ドラム缶は、厚さ10センチのコンクリートで作られた矩形処分容器に移される。この処分容器は、ドラム缶16本が入るよう製作されている。処分容器を載せたトラックが地下サイロの隣のトンネルの端に来て停まると、サイロの上に設置されている巨大クレーンが外に出て処分容器をつり上げ、サイロ内に一つずつ積み上げる。サイロが処分容器でいっぱいになると、砕石とコンクリートで隙間を埋めて閉鎖することになる。この閉鎖作業はまだ遠い将来の話だ。洞窟処分施設は、現在稼働中のすべての原発の廃炉過程で発生する中レベルの廃棄物まで収容してから閉鎖されるためだ。
 洞窟処分施設は、建設工事当時から多量の地下水漏れで論議が起きた。海水面より低い場所で、塩分の多い地下水がサイロ内に浸透し、放射性廃棄物が入ったドラム缶を腐食させ、その結果出てきた放射性物質が地下水に混入し、周辺環境を汚染する恐れがある。現場でブリーフィングをした原子力環境公団の関係者は「今は渇水期だから大幅に水が減ったが、平均的には1日1500トン程度発生する。安全のためにポンプを三重に設置し、事故が発生した場合にも問題なく外に水を汲み上げられるようになっている」と話した。
 しかし、慶州地域の環境団体と住民たちは最近、地下水排水管の不良施工疑惑も提起している。原子力環境公団が2021年5月に地下水配管の追加設置を終え、8月から本格運用に入ったが、12月から配管からの漏水が発生するなどの不良施工が明らかになったという主張だ。
 この日着工式を行った表層処分施設は、すでに運用中の洞窟処分施設に続く2段階の施設だ。低レベル放射性廃棄物ドラム缶12万5千本を貯蔵できる容量で設計された。地上に縦横縦各20メートル、高さ10メートル大の処分庫20個を設置し、処分容器を積み上げ、処分庫が満杯になれば閉鎖して持続的に管理するというのが原子力環境公団の計画だ。
 問題は、現在原発で保管中の使用済み核燃料の処理だ。中レベルと低レベル以下の放射性廃棄物処分場とは異なり、使用済み核燃料である高レベル放射性廃棄物の最終処分場は、敷地選定議論の第一歩すら踏み出せていない。昨年末、文在寅(ムン・ジェイン)政権は高レベル放射性廃棄物の中間貯蔵施設を敷地選定着手から20年以内に、永久処分施設を37年以内に確保する内容の「第2次高レベル放射性廃棄物管理基本計画」を確定した。この計画は、朴槿恵(パク・クネ)政権時の第1次基本計画が一方的に作られたという市民社会の主張により、公論調査を経て設けられた。しかし、市民社会からも歓迎されなかった。使用済み核燃料の原発敷地内での一時貯蔵を公式化し、原発地域を永久処分場にしようとしているとの疑いを消せなかったためだ。
 高レベル放射性廃棄物の管理は、尹錫悦(ユン・ソクヨル)政権が7月に確定したエネルギー政策方向にも含まれている。高レベル放射性廃棄物処分のための特別法を設け、コントロールタワーとして首相傘下に専任組織を新設し、推進することにした。26日、洞窟処分施設を訪れたイ・チャンヤン産業部長官は「高レベル放射性廃棄物処理特別法に、処分場の位置選定手続き、住民協議手続き、周辺地域支援に関する法的根拠をすべて含め、その法に基づいて透明で客観的な手続きを経ていく」とし、 「今年が高レベル廃棄物処分の元年になるようにする」と強調した。
 韓国水力原子力の使用済み核燃料貯蔵現況資料によれば、第2四半期末現在、全国の原発で保管中の使用済み核燃料は、貯蔵容量68万5460束の約75%にあたる51万6071束だ。ここから昨年拡充され多少余裕を持つようになった月城(ウォルソン)原発の乾式貯蔵施設(マクスター)貯蔵分を除けば、18万7460束の原発貯蔵容量の97%がすでにいっぱいの状態だ。
 2021年、韓国放射性廃棄物学会は、文在寅政権末期に樹立した第9次電力需給基本計画による原発稼働を反映した分析を通じて、古里(コリ)とハンビッ原発では2031年から、ハンウル原発では2032年から使用済み核燃料の貯蔵容量が飽和状態に入ると見通した。尹錫悦政権が明らかにしたように、設計寿命が切れたすべての原発で運転を続けるならば、飽和時点はさらに前倒しになる。

キム・ジョンス先任記者 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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