[2022_08_30_06]政府が原発処理水の行動計画改定 新たに漁業支援基金創設表明(毎日新聞2022年8月30日)
 
参照元
政府が原発処理水の行動計画改定 新たに漁業支援基金創設表明

 東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を巡り、政府は30日、関係閣僚会議(議長・松野博一官房長官)を開き、2021年12月に策定した行動計画を改定し、漁業向けの新たな風評被害対策として、基金を使った漁業者への事業継続支援策を盛り込んだ。西村康稔経済産業相は閣議後記者会見で、全国の漁業者が将来にわたって安心して漁業を継続できる対策に使う「新たな基金の創設を目指す」と述べ、21年度補正予算で風評被害対策として計上した300億円とは別の基金になるとの考えを示した。
 全国漁業協同組合連合会(全漁連)は22年6月に採択した海洋放出に断固反対するとした決議の中で、全国の漁業者が将来にわたり安心して漁業が継続できるよう、300億円とは別の超大型の基金を創設し、漁業用燃油の調達支援などを長期にわたって実施するよう政府に要求していた。行動計画は今後1年間に政府が実施する政策をまとめたもので、今回の改定は、海洋放出への反対姿勢を崩していない全漁連の要求を受け入れた形となった。
 西村氏は「引き続き、処理水の安全性などについて繰り返し丁寧に説明する」と述べた。経産省は必要な予算を23年度予算の概算要求に盛り込む方針だ。
 一方、行動計画では、風評被害が起きた際の損害賠償の基準について、年内に公表するよう東電に指導することも示された。賠償基準の公表は、手続きを簡略化・迅速化して被害者の負担を減らすことなどが狙いで、地域別の他、漁業、農業、観光業など業種別に具体的な基準を定める。会議に出席した東京電力ホールディングスの小早川智明社長は終了後の報道陣の取材に「(賠償基準は)関係者の意見をしっかりうかがいながら、決めてまいりたい」と話した。
 この他、国がモニタリングしている周辺海域の海水や生物の分析結果を分かりやすく確認できるホームページの作成など、情報発信にも力を入れるとした。
 処理水の海洋放出は、21年4月に政府が方針を決定した。今年7月には、原子力規制委員会が東電の実施計画を認可。東電は23年春の放出開始を目指して、8月から本格的な設備設置工事に入っている。【吉田卓矢】
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_: