[2022_01_11_06]小型原子炉、開発加速 脱炭素へ主要国後押し 「ハードル高い」の声も(時事通信2022年1月11日)
 
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小型原子炉、開発加速 脱炭素へ主要国後押し 「ハードル高い」の声も

 従来の原発より出力が小さい「小型モジュール炉(SMR)」が脱炭素社会に適した次世代技術として注目を集めている。米国など主要国の後押しを受け、メーカーが開発を加速。発電量が天候に左右される風力、太陽光など再生可能エネルギーの弱点を補う「安定性と柔軟性」(米企業)に期待が高まる一方、コスト面から専門家の間には商用化に慎重な見方もある。
 1年の多くが氷で閉ざされるロシア北東のチュコト自治管区ぺベクの港に、全長144メートルの巨大な「船」が停泊している。船内では小型原発2基(出力計7万キロワット)が稼働し、地域の電力源を担う。開発したロシア国営企業ロスアトムは、既存の火力発電所などに取って代わることで「年間5万トンの二酸化炭素(CO2)排出を削減できる」と説明する。
 SMRは、脱炭素の機運が急速に高まる中で、小回りの利く安定電源の候補として浮上した。米国やカナダ、英国が開発資金を拠出しているほか、昨年10月にはフランスのマクロン大統領も巨額投資の方針を打ち出した。日本でも萩生田光一経済産業相が今月6日、SMR開発をめぐる国際連携に政府が協力する方針を明らかにした。
 開発を競うメーカーで、商用化に最も近いと目されるのが米新興企業ニュースケール・パワーだ。出力7.7万キロワットのSMRは米当局の許認可手続きで先行し、2027年の稼働開始を目指す。同社は「需要に合わせて供給量を調整できる」と、発電量が不安定な自然エネルギーの補完的役割を強調。外部電源や注水に頼らず、原子炉を自然冷却する「これまでにない性能」を持つと安全性をうたう。
 半面、原発が避けて通れない核廃棄物の処理問題や、事故のリスクは解消されていない。原子力規制委員会の原子炉安全専門審査会委員を務める勝田忠広・明治大教授(安全規制)はSMRについて、「安全性やセキュリティー面を考慮すると、発電コストが割高になり、商用化のハードルはかなり高くなるだろう。実現しても、へき地などの特殊な用途に限られるのではないか」と話している。
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