[2022_01_12_05]東海第二原発 再稼働の道険しく 12月に対策工事完了予定 30キロ圏市町村の広域避難計画策定も見通せず (東京新聞2022年1月12日)
 
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東海第二原発 再稼働の道険しく 12月に対策工事完了予定 30キロ圏市町村の広域避難計画策定も見通せず

 日本原子力発電は今年、東海第二原発(東海村)再稼働に向けた事故対策工事を十二月に完了予定だ。だが、県や立地・周辺六市に再稼働の事前同意を求めるプロセスに入るには、三十キロ圏の十四市町村の全てが実効性ある広域避難計画を策定することが大前提。昨年三月の水戸地裁判決が避難計画の不備を理由に東海第二の運転差し止めを命じたことで「実効性」の要求は強まっており、計画が出そろう見通しは立たない。再稼働への道のりは険しい。(長崎高大、保坂千裕)
 「必要な検証をして実効性を確認しながら、住民の理解を得られた段階で策定していきたい」。東海村の山田修村長は十一日、県内の全市町村や原子力事業者などでつくる「茨城原子力協議会」の新年パーティーに出席後、村の広域避難計画について報道陣の取材にそう語った。
 村は、広域避難先となる守谷市などへの避難訓練が新型コロナ禍の影響で実施できておらず、避難計画も未策定。仮に順調に事故対策工事が完了しても、すぐに事前同意の是非を判断する状況にはならないことは誰の目にも明らかだ。
 大井川和彦知事も、パーティーでのあいさつで東海第二再稼働について触れ、実効性ある防災体制の構築などが前提になるとの考えを重ねて示した。
 東海第二では、新規制基準に基づく事故対策工事として、最大一七・一メートルの津波を想定した高さ二十メートルの防潮堤の建設や、外部電源が使えなくなった場合に備えた非常用電源の増設、原子炉の冷却設備の多重化などを進めている。
 一方、広域避難計画の整備は難航。県と、東海第二から三十キロ圏内の十四市町村には、重大事故に備えた避難計画策定が義務付けられているが、策定済みは県と五市町のみで、昨年一年間で新たに策定した自治体はない。昨年三月の水戸地裁判決以降、「実効性」の中身が厳しく問われるようになった影響もあり、策定済みの計画も内容の見直しを迫られている。
 加えて昨年は、三十キロ圏にある有床医療機関や入所型社会福祉施設の多くで、原発事故時に患者や入所者を避難させるための避難計画が策定できていない問題も発覚した。救急車や福祉車両の必要台数の確保が難しいことが背景にある。
 大井川知事は、自治体の広域避難計画の実効性を担保するには「全ての医療機関、社会福祉施設で避難計画が策定されることが必要」との認識を示しており、再稼働に向けたハードルはさらに高まっている。
 十一日のパーティーには原電の松井誠常務も出席したが、新型コロナ感染対策を理由に、報道陣の取材には応じなかった。
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