[2022_03_08_08]ウクライナ原発に関する状況 世界原子力協会(WNA)とIAEAの情報 ザポロジェ原発はロシア軍に攻撃され占領された 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2022年3月8日)
 
参照元
ウクライナ原発に関する状況 世界原子力協会(WNA)とIAEAの情報 ザポロジェ原発はロシア軍に攻撃され占領された 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

  
◎以下は、ザポロジェ原発の状況を伝える世界原子力協会(WNA)の記事の抄訳です。

◇ 2022年3月3日夜半、ロシア軍は原発の城下町エネルゴダールの入口の検問所を突破し、ザポリージャ原発に向けて約100台からなる重装甲車で町に突入、原発に向けて攻撃を開始した。
 エネルゴアトムのペトロ・コティンは、ロシア軍が占領した6基の原子炉を持つ欧州最大の原発のさらなる動向と情勢について話した。
 警備隊、地域防衛隊、エネルゴダールの住民の必死の抵抗にもかかわらず、ロシア軍の車列は発電所の敷地、隣接する建造物、訓練センターを至近距離から銃撃した。
 現在メンテナンス中の1号機に銃弾が命中し、さらに訓練棟A棟が全焼した。
 さらに長時間にわたり消防士が訓練センターでの消火活動を許さなかった。
 原子力施設の損傷の危険性が高いため、2号機と3号機は安全な冷温状態に移行した。現在は、発砲のあった範囲から最大距離離れた4号機が稼動している。

◇ 午前4:30まで、ザポロジェ原発の管理棟と発電所の検問所は、ロシア軍より攻撃された。
 3月4日午前9:00時現在、発電所の職員は勤務を認められているものの、連続して24時間近く現場で働いており、心身ともに疲れ果てている。
 シフト替えが必要だ。発電所の運営者は銃を突きつけられ、死傷者が出ている。(注:後日死者は出ていないと訂正されている)
 エネルゴダールへの熱供給を行う系統が複数箇所で被害を受け、町には暖房がないままだ。(注:後日復旧したとされる)
 原発での放射性物質や放射線の状況については、運営会社の管理はできていない。
 しかし、最新のデータによるとザポロジェ原発における放射線バックグラウンドは正常範囲内であった。

◇ 最大の脅威は、6基の原子炉と敷地内の冷却プールに保管されている核燃料だ。
 また、使用済燃料貯蔵施設には、約150個の使用済燃料貯蔵容器がある。
 原発のような技術的に複雑な施設が、核を安全に扱う方法を知らない核テロリストに占拠されていることを考えると、危険性は地域全体だけでなく、世界全体をも脅かすものである。
 「チェルノブイリ事故の際、爆発は1つの原子炉で発生したが、ザポロジェ原発では6基の原子炉があるので、原子炉への妨害と素人の操作の結果は、6倍の壊滅的なものになるだろう」とエネルゴアトムの責任者は述べた。
 「私たちは、ザポロジェ原発の状況、特に6基の原子炉と使用済核燃料貯蔵施設の運転に関する状況を監視し、管理しようとしていた。
 しかし、状況は極めて脅迫的で危険である。原子炉と放射線の安全要求事項に違反している。その結果を予測することは困難である。IAEAと原子力加盟国による迅速な介入が必要である。」

◎続いて、IAEAがインターネット上に掲載した最新情報−10の抄訳です。
ザポロジェ原発への攻撃後のIAEAの要請
                    2022年3月4日
ウクライナ最新情報、3月4日

・ロシア軍による攻撃の後、ウクライナ最大の原発敷地内の建物で火災が発生した、とウクライナの原子力規制委員会は述べた。
・IAEAによると、火災は現地時間の06:20(グリニッジ標準時の04:20)に鎮火したが、「重要な」設備には影響しなかった。
・ザポロジェ原発6基は「無傷」で、放射線レベルの変化は記録されていない。
・ロシア軍はサイトを占領していると規制当局は言っている。
・武力行使停止を訴え、IAEA事務局長はウクライナ訪問を計画する
・ウクライナ国家原子力規制局(SNRIU)は現地時間07:15(グリニッジ標準時05:15)の声明で、ロシア軍がウクライナ最大の原発を攻撃したために火災が発生したと述べた。
・原子炉から数百メートル離れた訓練棟の火災は現地時間の06:20に鎮火した、とSNRIUは述べた。
 IAEAは現場の火災は「重要な設備と発電所の職員が緩和措置を取っていた」ことに影響しなかったと伝えられたと述べた。
・SNRIUは声明の中で、ザポロジェ原発6基は「損傷を受けておらず、1号機の原子炉区画の補助建屋が損傷しているが、原子炉の安全性に影響はない」と述べた。
 原子力発電所の安全上重要な系統及び機器は運転中である。現在のところ、放射線の状況に変化は確認されていない」と述べた。
・SNRIUの緊急事態センターは活動を開始、ロシア軍が原子力発電所の敷地を占拠したと述べた。
 現場の管理者とは接触があり、当直スタッフが「電気設備の状態を監視し、安全な運転のための手順書の要件に従って運転を確保した」と述べている。
・敷地内の6基の発電設備のうち、1号機は停止中で、2号機と3号機は系統から切り離し、「原子炉建屋の冷却が行われている」。
 4号機は69万キロワットで運転中である。5号機と6号機は現在、冷温停止中である。
・現地時間16:30にウェブサイトに掲載された最新情報で、SNRIUは、夜勤の職員はシフトの変更の前に24時間以上働くことを強制されたと述べた。
 ストレスで医療を受けた人もいたが、死傷者はいなかった。
 同声明によると、4号機は現在82.5万キロワットで運転中である。

※≪事故情報編集部≫より
 この文章は、3月6日受信です。
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