[2022_03_12_01]11年目の3月11日に想う 電源喪失の恐怖を11年目にチェルノブイリ原発で再現 こんどは戦争と原発の脅威に世界は恐れる 山崎久隆(たんぽぽ舎 共同代表) (たんぽぽ2022年3月12日)
 
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11年目の3月11日に想う 電源喪失の恐怖を11年目にチェルノブイリ原発で再現 こんどは戦争と原発の脅威に世界は恐れる 山崎久隆(たんぽぽ舎 共同代表)

 原発とは、何という罪深い存在なのだろうか。
 11年前の3月11日から12日にかけて、私は福島第一原発で何が起きているのか、情報を取ろうとして様々なソースを探していた。電源喪失は報道されていたが、その後の状況はわからない。
 国と東電の情報が全く当てにならず、当時の枝野官房長官が「炉心には未だ水がある」と会見で語った12日未明、後に既に炉心が溶けていた。
 命がけでインターネットを通じて刻々と上げられる空間線量の情報を届けてきたジャーナリストの情報が、唯一、現地状況を推察させる情報だった。3月13日に双葉町内で毎時1ミリシーベルトを超えるとの報告に、背筋が凍った記憶がある。

○11年目にも同じ事が

 11年目に同様のことが起きた。ヨーロッパのウクライナ。
 1986年当時はソ連の領内にあったチェルノブイリ原発が爆発、日本にまで放射能が到達したのは事故の一週間後の連休中の出来事だった。
 その後、91年8月にウクライナが独立し、チェルノブイリ原発はウクライナの管理下に置かれた。しかし放射性物質の拡散による甚大な被害について、ロシア政府は賠償などはしなかった。
 チェルノブイリ被災者保護制度を作ったのはウクライナであり、公的保障を続けてきたのもウクライナだ。
 そのウクライナに軍事侵攻してチェルノブイリ原発、ザポリージャ原発を占拠した上、チェルノブイリ原発の電源も喪失させた。どちらの攻撃の結果であるかは問題ではない。そもそもロシアが軍事侵攻をした結果だ。

○11年以降も続く被災者の苦悩

 日本では、今も福島第一原発事故を起こした東電が、被災者への賠償責任から逃げ、ついに最高裁からも違法性を指摘された。
 例え賠償が十分であったとしても、失われた家族、人々、故郷、暮らしは帰ってこない。そのうえ被災者を差別し、苦しめ続ける国や東電そして自治体の仕打ちは、事故を起こした責任を取るどころか、36年を経て今、ウクライナに戦争を仕掛け事故原発に軍事侵攻してきた。その口実は「核兵器開発疑惑」。
 今も続く被災者の苦悩に、追い打ちを掛けるロシア。加えてウクライナに攻め込んでいるのは、国境を越えて直ぐのベラルーシの人々も含まれている。ゴメリなどはチェルノブイリ原発からの放射能による高濃度汚染地帯になったところだ。
 ベラルーシ軍が本格的に参戦した場合、被災者同士が撃ち合うことになる。

○日本の被災者は国に虐げられる

 原発事故で苦しめられる被災者は、日本でもひどい仕打ちを受けている。
 賠償は不十分、あるいは一切受けられていない。
 公務員住宅などをみなし仮設住宅として提供していたのに、みなし仮設住宅の提供を打ち切ったとして居住者に退去を求めて訴える福島県。
 やむにやまれずに避難した人々には、当然ながら生存権がある。この事故は国策により導入された原発が引き起こした事故であり、それに対する賠償責任は国にもある。
 事業者も国も、賠償や被災者支援に背を向け、早く原発事故を忘れさせようとしている。そのうえ、汚染水を海に投棄することに、東電よりも積極的なのは国だ。
 二次、三次被害を引き起こしてでも原発事故を忘れさせ、さらに、今回のロシアによる軍事侵攻、それに対する制裁によりロシアからの原油や天然ガスの停止に伴う「エネルギー危機」に対して、自民党議連などが早速「原発の再稼動促進」「原発の新増設を」などと叫び出す。こういうのを火事場泥棒という。

○ウクライナの現実を見ても今こそ原発をなくそう

 杉本達治福井県知事は、「武力攻撃への備えとして、原発の安全確保や住民避難の在り方を再検証するよう求める要請書を提出」し政府に要請したという。
 「自衛隊による迎撃態勢に万全を期すことや、原発が集中する嶺南地域への自衛隊部隊の配備を訴えた。」(中日新聞3月9日)
 なんという本末転倒な、倒錯した考えだろうか。
 嶺南地方には、武力攻撃を受けるような施設、設備は何一つ無い。米軍基地も自衛隊基地もない。あるのは原発だけ。原発をなくせば、そもそも武力攻撃を受けることはない。戦争は国同士の問題だから、日本が戦争をしないことは、外交政策の問題であり、嶺南地区の問題ではない。つまり、普通に考えるならば、原発があるから武力攻撃を呼び寄せていることになる。
 これは福井県嶺南地方に留まらず、原発や再処理施設、米軍基地のある地域全てに言えることだろう。
 外交的な取り組みに失敗し、武力攻撃を受けても守りきれる国にするのだ、そんな声が地方自治体の長から聞くことになるとは、とんでもない時代になっている。
 これを変える責任は、私たちに等しくあるのだ。
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