[2022_04_05_03]原子力人材足りぬ 苦慮する業界 除染や解体、深刻さ増す(茨城新聞2022年4月5日)
 
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原子力人材足りぬ 苦慮する業界 除染や解体、深刻さ増す

 東京電力福島第1原発事故後、原発への逆風がやまず、原子力業界が人材確保に苦慮している。国内は「廃炉時代」を迎え、原発関連の東海再処理施設も廃止が決まっている。施設を畳むには長期間を要する中、担い手の先細りが懸念される。脱炭素社会の到来で原発に再び脚光が当たる流れもあり、関係者は風向きの変化に期待する。

■若手少なく

 「長期にわたる廃止措置で非常に重要かつ困難な課題。対応を定期的に報告してほしい」
 2月28日、原子力規制委員会の審査会合。廃止措置に入る日本原子力研究開発機構(原子力機構)東海再処理施設(茨城県東海村)の審査で、人材確保が議題となり、規制委側が念押しした。
 原発の使用済み核燃料からプルトニウムとウランを取り出す「再処理」をする同施設は、2007年に運転停止、14年に廃止が決まった。施設は再処理に伴って生じた高レベル放射性廃液を抱え、廃止には約70年かかる。
 会合で原子力機構は、運転経験者の退職や職員の年齢構成の偏りを挙げ、「廃止措置を担う若手技術者の人材確保と技術継承が困難な状況」と説明した。
 原子力機構によると、再処理施設の人員は、運転の最盛期だった1994年ごろ、協力会社を含めて約1000人。施設の維持管理が主になった現在は約760人に縮小した。定年退職の増加や採用控えが重なり、職員は40〜50代が多く、20〜30代が減った。除染や解体が本格化すれば人手はさらに必要となる。
 原子力機構の担当者は「20年後に管理職の年齢層が足りなくなる」と見通しを語る。中途採用を実施するほか、施設を熟知する運転経験者の知識などをデータベース化し、技術継承を図る考えだ。

■需給ギャップ

 日本原子力発電東海第2原発(東海村)は2011年3月の東日本大震災後、運転停止が続く。国内で同型原発は稼働しておらず、社員を他電力に出向させ、別型原発の運転を経験させている。
 国内の原発は廃炉時代を迎える。建設中も含めた60基のうち24基が廃炉になり、作業に30〜40年程度を要する。安定的な人材確保は欠かせない一方、業界を志す学生は少ない。
 日本原子力産業協会(東京)は原子力関連の合同企業説明会「原子力産業セミナー」を毎年開いている。10年度の参加学生数は1903人だったが、原発事故後は大幅に減り、21年度は380人にとどまった。参加社数は事故後、34社に下がったものの、最近は増加傾向で、21年度は65社に上った。人材の需給ギャップ¥態に、同協会の担当者は「人材確保の難しさが表れている」と話す。

■「親が反対」

 大学側も「原子力離れ」に悩む。茨城大(水戸市)の大学院は09年度、原子力工学を全般的に学ぶ教育プログラムを立ち上げた。福島第1原発事故の逆風で参加学生は減少、約3年前にプログラムを縮小した。
 原子力教育を担当する関東康祐教授は「原子力を志望して親に反対された学生もいた。再稼働が進まず、学生にとって魅力的ではない」と語る。その上で「専門的な教育を受けていない人が原子力に関われば、事故の確率も上がる」と、人材難による安全への懸念に触れた。
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