[2022_02_16_09]トンガは他人事でない…日本近海の海底火山の脅威 7300年前には巨大噴火で壊滅的被害 専門家「いつ起きてもおかしくない」(関西テレビ2022年2月16日)
 
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トンガは他人事でない…日本近海の海底火山の脅威 7300年前には巨大噴火で壊滅的被害 専門家「いつ起きてもおかしくない」

 南太平洋のトンガ諸島で海底火山が噴火し、世界各地を津波が襲った災害から、およそ1か月です。津波も発生し周辺の島を襲いました。
 津波は世界各地で観測され、およそ8000キロ離れた日本にも深夜に到達。不安を感じた方も多かったのではないでしょうか。
 実は日本でも、海底火山のリスクは身近にあります。

「西之島」噴火を繰り返し形を変える

 本州の南、小笠原諸島の海域にある「西之島」。
 環境省から派遣された専門家の調査チームが去年9月に記録した映像には、噴煙がたちのぼる様子が映っています。西之島は、海底火山の噴火で生まれ、その後も噴火を繰り返し、形を変えてきました。
 日本周辺には活火山が111カ所あり、そのうち3分の1が海底火山です。

津波に火山灰…日本在住のトンガ出身者に聞く被害

 1月22日、東大阪市の花園ラグビー場。
 トンガ出身でラグビーチーム「花園近鉄ライナーズ」のスタッフ、タウファ統悦さん(41)。噴火の1週間後、試合前に支援を呼びかける募金活動をしていました。
(2月19日 釜石シーウェイブス戦でも試合前に花園ラグビー場で募金活動予定 )

【試合を見に来た人】
 「ご家族とは連絡がとれましたか?」
【タウファ統悦さん】
 「まだとれていません。でもきっと大丈夫ですよ…きっと大丈夫だと思います」
 この時、トンガとの通信が遮断され、母国に住む母親や妹たちと連絡がとれていませんでした。
【タウファ統悦さん】
 「今電話しているんですけど、音も鳴っていないですね。今日も3、4回くらい電話したんですけど…」
 トンガの被害のことを思うと、言葉が出ません。
 噴火の影響で島の大部分が火山灰に覆われ、津波で家を流された人たちが大勢いました。人口の8割以上にあたるおよそ8万4000人が被災したとされています。
 その後、国際電話がつながり、タウファさんはやっと家族全員の無事を確認することができました。
【タウファ統悦さん】
 「何が一番困っている?」
【タウファさんの妹・メレさん】
 「水を入れたタンクに灰が積もって壊れてしまったから直さないといけない。水だけじゃなくて食料も大変。1カ月後くらいには家にあるイモがなくなるかもしれない」
 深刻な水不足に加え、主食であるイモの畑は灰で壊滅状態に。泥や瓦礫が道路を塞ぎ、1カ月近くたっても支援物資は十分に行き渡っていません。また、精神的にも追い込まれていました。
【タウファさんの妹・メレさん】
 「雷が鳴ったり、ちょっと強い風が吹いただけで子供たちが、また噴火するの?って毎日言っている。家族みんなが眠れなくなっている。島の住人たちはみんな不安になっていると思う」

7300年前の海底火山の巨大噴火 日本も他人事でない

 ひとたび巨大な噴火が発生すると、大きな災害をもたらす現実。
 そこでもし、巨大な噴火が発生したら?火山マグマ学の専門家、神戸大学海洋底探査センターの巽好幸客員教授に聞きました。
【神戸大学海洋底探査センター・巽好幸客員教授】
 「超巨大噴火が起きると現状のままでは全てのインフラがストップするし、地震のように比較的限られた地域だけの被害じゃなくて、もっと広範囲に同時にダメージをくらわす可能性がある」
 海底火山は日本周辺におよそ30カ所あります。過去の経験を踏まえると、関西を含む広い地域に深刻な影響を及ぼす恐れがあると巽教授は指摘します。
【神戸大学海洋底探査センター・巽好幸客員教授】
 「今から7300年前、縄文時代、鹿児島県の南方沖の鬼界カルデラ。今回の噴火よりも2桁3桁も大きい噴火があってその時にカルデラができて、津波の高さが20mぐらいとも言われているくらい近隣の島を襲っていますね」
 九州南部の薩摩硫黄島周辺の海底には、直径およそ20キロにも及ぶ巨大な「カルデラ」があり、過去の大噴火の形跡があります。
 この場所で起きた大噴火では、大量のマグマが噴出した結果、火山が陥没して「カルデラ」が形成されました。そこに周囲から海水が流れ込み、跳ね返ることで潮位が変化し、巨大な津波が発生したと考えられています。
 専門家たちに話を聞くと、九州南部に数十メートルの津波と火砕流が押し寄せたほか、徳島県に7.3m、和歌山県に4mの津波が到達した可能性があります。列島は壊滅的な被害を受けたのです。
 巽教授によると、この場所で次の巨大噴火が発生する確率は今後100年間でおよそ1%。しかし、油断はできないといいます。
【神戸大学海洋底探査センター 巽好幸客員教授】
 「最悪の事態を考えると九州で噴火が起きたら、近畿で、50センチくらい、1日で火山灰がつもります。50センチ積もると、木造家屋は多くは倒壊の可能性があるほか、交通とかインフラは全部ストップ。1週間で復旧できるとは思えない。(日本は)世界で一番火山が密集している地帯。ということは、確実に噴火は起きてもおかしくないと覚悟しないといけない」
 海底火山だけではなく、陸上にある火山も同様に火山灰や津波のリスクを持っています。
 身近にある“知られざる”脅威。この国で暮らす以上、“遠い世界の出来事”として片づけることはできません。
(関西テレビ「報道ランナー」2022年2月10日放送)
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