[2024_07_26_01]敦賀原発2号機、再稼働に不適合と結論 「原子炉直下に活断層否定できず」と原子力規制委 廃炉の可能性も(東京新聞2024年7月26日)
 
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敦賀原発2号機、再稼働に不適合と結論 「原子炉直下に活断層否定できず」と原子力規制委 廃炉の可能性も

 22:06
 日本原子力発電(原電)が再稼働を目指す敦賀原発2号機(福井県敦賀市)を巡り、原子力規制委員会の審査チームは26日の会合で、原子炉建屋直下に活断層が通る可能性があるとして、原発の新規制基準に適合しないと判断した。規制委が今後、正式に不適合と決定する見通しで、再稼働は認められない。不適合となれば国内の原発で初となる。日本の規制で商用炉が再稼働できなければ史上初のケースで廃炉の可能性も出てきた。(渡辺聖子、山下葉月)

 敦賀原発 福井県敦賀市に立地。2号機(出力116万キロワット)は1987年に運転を開始し、東日本大震災後の2011年5月から停止。1号機(35万7000キロワット)は1970年の運転開始日に開幕した大阪万博に送電し「原子の灯」と宣伝した。現在は廃炉作業中。3、4号機増設計画があり、敷地が造成されている。

 ◆原電側は追加調査を要望したが…

 会合で、原電側は「追加調査して申請内容を補正したい」などと抵抗したが、審査チームの結論は変わらなかった。規制委は31日に開かれる定例会合でチームの結論を議論し、村松衛社長から追加調査の説明を求めるかどうかを決める。ただ、チームは「同じ地点を調べても結論は変わらない」との認識を示し、再稼働は困難だ。
 福井県内の会合に出席していた村松社長は報道陣に、廃炉について「考えていない」とした上で「資料が不十分、不正確なところがあるとの指摘の中で、追加調査をお願いした」と説明した。

 ◆「K断層、原子炉建屋直下まで延びている可能性あり」

 新基準では、原子炉などの重要施設を活断層の上に設置することを認めていない。審査チームは、2号機から北約300メートルで見つかった「K断層」について、
(1)将来動く活動性があるかどうか
(2)建屋直下まで延びる連続性があるかどうか
を議論した。原電は地層の年代や性状などの調査結果を根拠にして、(1)(2)とも否定した。

 これに対し、審査チームは5月の会合で活動性について原電の主張を退け、「活動性を否定することは困難」との結論を出していた。この日の会合は連続性を議論し、審査チームは「原電の評価の信頼性は乏しく、連続する可能性は否定できない」と指摘した。その上で新基準に適合しないと結論付けた。
 敦賀原発を巡っては、規制委の別の専門家チームが2013年に2号機直下を走る断層を活断層とする報告書をまとめた。原電はこれに反論して2015年、再稼働に向けた審査を規制委に申請。しかし、原電によるデータの書き換えや誤記が発覚し、審査はほとんど進まないまま2021年と2023年の2度にわたり中断。規制委は原電に申請書を修正させ、必要なデータが盛り込まれたことを前提にして、昨年9月に審査を再開した。

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 ◆<解説>原発のリスク改めて浮き彫りに

 敦賀原発2号機の命運を握ったのが、原子炉直下の活断層だった。原発は大地震を引き起こす活断層の有無だけでなく津波やテロ対策、住民の避難計画を十分に確認しなければ使えない。今回、規制委審査チームが新規制基準に不適合と示した判断は、原発のリスクを改めて浮き彫りにした。
 新基準や規制委は、東京電力福島第1原発事故のような過ちを繰り返さないという精神の下で誕生した。その意味で今回の結論は妥当だった。ただ、初心を忘れていないか―。そんな疑問を感じる場面もあった。
 これまで規制委は、機器点検漏れが続出した高速増殖原型炉もんじゅに関し勧告し、廃炉の引き金を引いたが、商用炉の再稼働の審査で不適合としたことはない。川内原発(せんだい、鹿児島県)では、周辺火山のリスクを有識者が指摘しながら、パスさせた。
 浜岡(静岡県)や泊(とまり、北海道)など地震や津波が懸念される原発の審査は続く。原発の最大限の活用を掲げる岸田政権の下、再稼働の圧力は高まるだろう。だが、自然災害はいつどこで起きるか分からない。規制委は発足の精神を忘れず、「自然の声」に謙虚に耳を傾けて判断していくことが重要だ。
 地震、津波、火山、テロなどで事故が誘発されれば取り返しがつかない原発に頼り続けるのか。見直す契機だ。問い続けるしかない。(荒井六貴)
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