[2025_01_11_01][どうなる?2025年の柏崎刈羽原発]原発事故時の「屋内退避」は現実的か?すれ違う自治体と原子力規制委員会(新潟日報2025年1月11日)
 
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[どうなる?2025年の柏崎刈羽原発]原発事故時の「屋内退避」は現実的か?すれ違う自治体と原子力規制委員会

 11:30
 東京電力福島第一原発であってはならない事故が起きた背景には、原発の安全神話があった。国や事業者にまん延した「原発事故は起こり得ない」という過信だ。
 その神話がよみがえりつつあるとの指摘が上がっている。
 政府が柏崎刈羽原発7号機(新潟県)の再稼働を目指す中、現在進む原発事故時の被ばく線量シミュレーションや屋内退避の運用見直しでは、福島事故と同等かそれ以上の事故が起こった場合の視点を欠いているように映る。2025年、再稼働を巡る議論はどのような方向へ向かうのか。(新潟日報社原発問題取材班)

 原発事故時、原発から半径30キロ圏の避難準備区域(UPZ)の住民が行う「屋内退避」は、自宅などにこもって被ばくを抑える対策だ。
 だが、地震などの自然災害と原発事故が重なる複合災害時に行うのは現実的なのか。根本的な問いを改めて突きつけたのが2024年1月の能登半島地震だった。
  「物理的に屋内退避できない時に、どう対応するのかを改めて議論するべきだ」。多数の家屋が倒壊した能登半島地震を受け、花角英世新潟県知事は2月に原子力規制委員会を訪ねて、そう訴えている。
 長岡市をはじめとした新潟県内UPZ内の自治体も議論を注視している。
 しかし規制委は、2月に原子力災害対策指針を見直す議論を始めた早々に、基本方針の変更は「不要」だとし、屋内退避の対象範囲や期間、解除の基準など運用の見直しに論点を絞った。複合災害時の検討は「範疇(はんちゅう)外」としたまま、1月中に報告書案を示す。
 地震を機に見直しに着手したはずが、原発事故が単独で起きた場合の検討に終始する規制委。自治体側とのすれ違いは、新潟県内30市町村でつくる「原子力安全対策に関する研究会」が2024年11月に開いた会議でも浮き彫りになった。
 「複合災害を前提とした検討をしないと、実効性のある対策にならない」。出席した規制委の担当者に対し、市町村側から疑問の声が相次いだ。
 福島第一原発事故に関する新潟県独自の「三つの検証」の一つ、避難委員会で委員長を務めた関谷直也・東大大学院教授(災害情報論)も「規制委は(複合災害の議論から)逃げ続けている」と語気を強める。
 地震時に屋内退避が実効的かどうかは、能登半島地震以前から疑問視されていた。
 避難委は2004年の中越地震や2016年の熊本地震などを踏まえて議論。2022年にまとめた報告書で、建物やライフラインの被害、余震など多くの課題を挙げ「困難」と結論づけている。
 屋内退避が無理ならどうするか。
 関谷氏は、自治体が次善の策を検討するためにも、国側が具体的な指針を示す必要があるとする。そうした姿勢が見えない国に対し、「新規制基準の下では、屋内退避が必要になるような事態が起こりにくいと考えているのではないか」と過信を懸念した。
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