[2025_11_04_08]ウランを使用しない、中国砂漠上のトリウム原子炉が初成功(中央日報2025年11月4日)
 
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ウランを使用しない、中国砂漠上のトリウム原子炉が初成功

 09:40
 中国が海のない甘粛省のゴビ砂漠に建設したトリウム溶融塩原子炉で世界で初めてトリウムをウラン核燃料に変える実験に成功した。中国が実験した原子炉はトリウムを「高温液体状態の塩」(溶融塩)とともに原子炉に注入して核分裂を起こして発電する原子力システム。溶融塩が冷却材の役割をするため、冷却水を供給する海の近くに原子炉を建設しなくてもよい。西側で技術的な限界のため放棄した最新原子炉システムの開発に中国が成功したのだ。

 中国科学院(CAS)は1日、ゴビ砂漠のトリウム溶融塩実験炉(TMSR=Thorium Molten Salt Reactor)でトリウムを溶融塩原子炉に注入し、世界で初めて実験データを確保したと発表した。国営新華社通信は「ウラン鉱石の代わりにトリウムを燃料として使用する世界唯一の稼働型溶融塩原子炉」と伝えた。

 トリウム(元素記号Th)は放射能が低い銀色の金属で、自然状態では岩石の中に存在する。中国のトリウム鉱物埋蔵量は28万6000トンと、インドの34万トンに続いて世界で2番目に多い。1000年以上使用できる量という。

 トリウム自体は核分裂を起こすことができないが、トリウムの原子核に中性子を衝突させて核分裂性ウラン−233に変換させるのがトリウム溶融塩原子炉の核心技術だ。内陸にも原子炉を建設でき、ウラン原子炉より大きいエネルギーを生産できるという利点がある。放射性廃棄物も少なくて安全性も高い。このため第4世代先端原子力システムに挙げられる。鉛を金に変える「錬金術」に例えられたりもする。

 しかし実際にアイデアを具現するにはいくつか技術的な難関が存在する。トリウムをウランに変える過程で繊細な制御技術が必要であるからだ。米国は1965年にテネシー州国家実験室に溶融塩実験炉を建設したが、技術的解決策を見いだせず結局は研究を放棄した。半面、中国は2011年に「未来先端核分裂エネルギー」先導プロジェクトに選定し、100余りの研究所・大学・産業体を参加させて核心素材と装備の国産化に成功した。

 中国の成功で原子力発電の環境自体が変わるという見方が出ている。従来の原発は冷却材などとして使用するために多くの水が必要であり、水が豊富な海岸に原発を建設する。水が枯渇すれば原子炉の炉心が過熱して溶ける恐れがある。上海応用物理研究所の専門家は新華社に「トリウム溶融塩原子炉は高温の液体溶融塩を冷却材として使用するため、巨大な圧力容器や冷却のための多量の水が必要ない」とし「核燃料を『高温の塩』に入れて電気を生産する方式であり安全で効率的」と説明した。
 上海応用物理研究所の李晴暖副所長も「トリウム溶融塩原子炉は原子炉を停止することなく燃料を再装填でき、燃料活用度を高めるだけでなく、放射性核廃棄物も大きく減らすことができる」とし「原子炉を地下に建設して完ぺきな遮蔽システムを備えることができ、一般大気圧状態で作動して爆発の危険がない」と科学技術日報に説明した。

 現在、中国は実験原子炉→研究原子炉→試験原子炉の3段階戦略で技術の完成を推進中だ。今回成功した原子炉は実験的な性格であるため容量が2MW(メガワット)にすぎないが、次は2035年までに100MW級試験プロジェクトを完成させるのが目標だ。すでに中国が産業・軍事的転用を念頭に置いているという声も出ている。中国の国営江南造船所は2023年に世界で初めて核動力コンテナ船の設計を発表し、溶融塩原子炉を採用した。溶融塩原子炉を原子力空母に採択する計画という報道も出ている。
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