[2024_10_08_05]米国編/2 建設撤退、東芝巻き添え(その1)(毎日新聞2024年10月8日)
 
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米国編/2 建設撤退、東芝巻き添え(その1)

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 米南部ジョージア州で原発新設が原因で電気料金が急上昇し、市民が怒りを爆発させている。
 原発大国の米国で34年ぶりに建設許可された原子力業界期待のプロジェクトだったが、予期せぬトラブルで工期や費用が膨らんだ。それは日本の名門企業を揺るがす事態にも発展した。
 米原子力規制委員会(NRC)がボーグル原発3、4号機の増設計画を承認したのは2012年だった。
 メーカーは米ウェスチングハウス(WH)。
 「原発ルネサンス(復活)」(米エネルギー省)と期待を集めたものの、実際に工事が始まるとトラブルの連続だった。
 米エネルギー省は2023年3月に公表した報告書で、ボーグル原発の工事の遅れの主な原因を分析している。
 まず現場の作業で不具合が多く、再工事に時間を要してしまった。
 下請け業者から部品や材料の納入が遅れたり、納入品が基準を満たしていなかったりすることもあった。
 建設作業員の生産性が想定より低かったうえ、的確な作業指示やスケジュール管理ができなかった。
 必要な労働者をなかなか確保できず、新型コロナウィルス禍が人手不足に追い打ちをかけた−としている。
 一方、根本的な原因として、米国では原発の新規建設計画に30年以上の空白期間があり、現場の細かなノウハウが失われていたとの指摘もある。
 ボーグル原発工事の遅れはWH社の経営を圧迫。2017年3月、WH社は経営破綻に追い込まれた。
 そのWH社の親会社だったのが日本の東芝だ。
 世界的な原発需要の拡大を見込み2006年に数千億円を投じて買収したが、福島第一原発事故の影響もあり経営の足を引っ張られた。
 経営破綻を受け、東芝はWH社がボーグル原発から撤退するために37億ドル(現在のレートで約5500億円)の債務保証を支払ったが、この際の損失が、後に日本で大騒動となる「東芝破綻」の要因となった。
 一方、WH社の破綻を機に、ジョージア州では消費者団体などからボーグル原発の建設中止を求める声が強まった。総工費が膨らんで、後に電気料金が大幅に値上げされる恐れがあったためだ。
 だが、「経済的なプロジェクトとは言えない」との専門家の批判があったにもかかわらず、推進派の意見が尊重され計画は続行された。
 工事完成は当初予定より7年遅れたうえ、2基で140億ドルと見込まれていた総工費は310億ドル(約4兆6000億円)超に膨らんだ。
 「地球上で最も高価な原発」。ボーグル原発にはそんな不名誉な「称号」が付けられた。【アトランタで大久保渉】(後略)
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