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[2025_09_27_02]【動画】サントリーニ島の「謎の群発地震」、ついに原因を解明 マグマと震源の動きを3DCG化、火山どうしの驚きの「つながり」も明らかに、ギリシャ(ナショナルジオグラフィック2025年9月27日) | ![]() |
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参照元
04:00 2025年1月下旬、ギリシャのエーゲ海に浮かぶサントリーニ島、アモルゴス島、アナフィ島の地下で何かがうごめきはじめ、のどかな島々は2万8000回以上の謎めいた群発地震に襲われた。マグニチュード5.0以上の地震も数回あり、非常事態宣言も出された。サントリーニ島の人々は、近々火山が激しく噴火するのではないかと恐れた。(参考記事:「サントリーニ島で謎の群発地震、科学者困惑 「極めて不可解」」) 地震の危機は約1カ月後に終息し、人々は胸をなで下ろした。そして今、科学者たちは各種の地震観測機器と人工知能(AI)を駆使し、犯人を特定できたと考えている。地殻の深くからシート状のマグマが急速に昇ってきて、群発地震を引き起こしていたのだ。研究は9月24日付けで学術誌「ネイチャー」に掲載された。 今回の分析は、サントリーニ島と、その沖合の海底にあるコロンボ火山との驚くべきつながりも明らかにした。「2つの火山は連絡しているのです」と、ドイツ、キールにあるGEOMARヘルムホルツ海洋研究センターの地球物理学者で、論文の著者の一人であるイェンス・カーステンス氏は言う。 研究チームのデータは、地下で起きている現象の表面を見ているにすぎない。しかし、緻密なモニタリングのおかげで、「じつに興味深い知見を導き出せました」と、英国立海洋学センターの海底火山学者イゾベル・ヨー氏は言う。なお、氏は今回の研究には関与していない。 さらに、科学者たちは今や、この一帯の地下のマグマの動きを追跡できるようになっている。この知識があれば、次にエーゲ海の島々で地震が始まったとき、噴火の可能性をより正確に予測できる。(参考記事:「地震はなぜ、どのように起きるのか、世界で年平均4万人弱が犠牲」) 画像 2021年に撮影されたサントリーニ島の航空写真。現在のカルデラは、紀元前1600年頃の噴火によって形成された。(PHOTOGRAPH BY LEPRETRE PIERRE, GETTY IMAGES) 群発地震の前から監視していた科学者たち 歴史的に、エーゲ海のこの一帯では大規模な火山噴火が何度も発生している。サントリーニ島はカルデラの一部で、水没した中心部からは一対の小さな火山島パレア・カメニとネア・カメニが顔を出している。これらの火山は悪名高く、サントリーニ島の紀元前1600年頃の大噴火は1つの文明を滅亡させている。(参考記事:「3600年前の超巨大「ミノア噴火」、津波の犠牲者をついに発見」) また、サントリーニ島から北東に約7キロの海中にあるコロンボ火山も、1650年の大噴火で大津波と有毒ガスを発生させている。 サントリーニもコロンボも活火山なので、将来再び噴火する可能性がある。そのため、2025年の初めにサントリーニの地下で群発地震が発生したことは科学的には予想外ではなかったものの、不意をつかれた1万5000人の住民の間に不安が広がった。(参考記事:「エーゲ海の火山島、最悪の想定を更新する大爆発がありうると判明」) 住民の多くは島から避難し、科学者たちは群発地震の原因の究明に奔走した。不可解なことに、群発地震の震源は短期間のうちにサントリーニ島から離れて東の沖合に移動し、近くの断層帯に集まったが、その上に既知の火山はなかった。 「当時は多くの不確実性がありました。群発地震がマグマによるものなのか地殻変動によるものなのか分からなかったのです」と、ドイツ、ポツダムにあるGFZヘルムホルツ地球科学センターの地球物理学者で、今回の論文の著者の一人であるマリウス・イスケン氏は振り返る。 動画 エーゲ海のサントリーニ島と周辺海域の地下で、マグマの上昇に伴い発生した群発地震の位置と深さの推移を示す、研究チームが作成した3Dアニメーション。(MARIUS P. ISKEN ET AL.) 実は、科学者たちは群発地震が発生する前からサントリーニ島とコロンボ火山を監視していた。その上、この一帯を観測機器でカバーして自然の科学実験室にしようという学際的な取り組みも始動していた。ドイツとギリシャが主導する「MULTI-MAREX」というプロジェクトだ。 コロンボ火山の火口内には水中センサーが設置されていて、地震の信号と海底の揺れによる圧力の変化を検出していた。観測チームは、一帯の地形の微妙な変化を追跡できるレーダーを搭載した衛星と、GPS地上局、火山ガス検知器も利用した。 さらに、数十年分の地震データを使って訓練された機械学習プログラムも投入した。これらのプログラムは、かすかな地震まで識別し、その震源を正確に突き止めることができた。(参考記事:「「AI」 人工知能が切り開く科学の未来」) これらのおかげで、研究者たちは群発地震を引き起こしたものをリアルタイムで追跡できたのだ。 昇るマグマ、沈む島々 群発地震の前の2024年7月から2025年1月にかけての観測データは、サントリーニ島のカルデラがわずかに隆起し、二酸化炭素と水素ガスが漏れ出していることを示していた。これは、わずかな量の新しいマグマが浅いマグマだまりを満たしていることを意味していたが、この現象はほとんど気づかれずに終わった。 続いて群発地震が始まった。1月下旬から2月末まで、群発地震はサントリーニ島の地下からコロンボ火山の南の海域の地下へと移動した。最初のうちの震源の深さは約18キロで、わずか数週間で約4キロまで浅くなった。 研究チームは、群発地震と一帯の変形のデータから、マグマの巨大なカーテンが地表に向かって縦方向に押し寄せてくる様子を描き出した。マグマはその際、もろい岩盤を何キロにもわたって突き破り、周辺の一連の断層に圧力をかけて破壊していた。 マグマの上昇は「連鎖反応を引き起こしました」と、米ウッズホール海洋研究所の地球物理学者で、今回の論文の著者の一人であるヨナス・プライネ氏は説明する。「それが、サントリーニ島で感じられた、より強い地震を引き起こしたのです」 また、マグマが地殻に入り込んで上昇するにつれ、サントリーニ島とコロンボ火山の地下にある別のマグマだまりが、マグマの流出によって縮んだ。その結果、どちらの火山も沈降した。 マグマが上昇する勢いのよさから、「マグマが浅い海底に到達する可能性があった」とイスケン氏は言う。その場合、爆発的な活動を引き起こしていたおそれがある。幸い、上昇は勢いを失い、危機は去った。 ほとんどのマグマの上昇は噴火を引き起こすことはなく、今回もそうだった。「おそらくマグマの量が十分でなく、浮力も不十分だったので、地表に到達しなかったのでしょう」とヨー氏は言う。 ギリシャの地下世界の新しい地図 今回のマグマの上昇は地表に出ることなく終息したが、これからもそうなるとは限らない。地下のマグマの通り道をさらに描き出せば、研究者が将来、危険なマグマをリアルタイムで追跡して地元の人々に警告するのに役立つはずだ。 サントリーニ島とコロンボ火山にマグマを供給する2つのマグマだまりは、地殻の浅いところでは直接つながっていない。しかし、「より深いところでつながっているのは、今やほぼ確実です」とカーステンス氏は言う。 彼らのデータでは地殻の深部の様子までは明らかにされていないが、マグマが現れて上昇していった一方で、すぐ近くのマグマだまりのマグマが減少したという事実は、単なる偶然以上のものを感じさせる。 「サントリーニ島とコロンボ火山の配管系はつながっているのです」とプライネ氏は言う。「一方のマグマだまりの圧力や応力の変化が、他方のマグマだまりに影響を及ぼすのです。1つの地下水面の変動に近隣の2つの泉が反応するようなものです」 科学者たちはかつて、近くにある火山どうしが「結びついている」可能性を提案するのに慎重だった。けれども近年、ハワイ、アイスランド、アフリカ中央部や東部の一部など、世界中の火山系から得られた新たな証拠から、一方の火山の地下での出来事が他方の火山に直接影響することや、マグマは上昇するだけでなく横方向にも移動することが示唆されている。(参考記事:「ハワイ島の地下に群発地震源の巨大な「マグマ網」、科学者ら驚愕」) 「火山のマグマだまりがあるのは浅いところだけではありません。地殻を貫くマグマ系もあるのです」。今回の研究には参加していないが、英オックスフォード大学の火山学者であるデビッド・パイル氏はそう話す。(参考記事:「終わりの見えないアイスランドの噴火 対策はあるのか?」) サントリーニ島とコロンボ火山も同じで、2つの火山は、地下深くに隠れたマグマの心臓に接続する2本の大動脈のようなものだ。火山の上に住む人々にとってありがたいことに、科学者たちは今、その脈を測れるようになっている。 画像 インドネシア西部のシナブン山。約400年にわたって休止していたが、2010年8月、噴火とともに眠りから覚めた。インドネシアを含む環太平洋火山帯はプレートの境界に当たることから、世界の活火山の約75%が集まっている。(PHOTOGRAPH BY TIBTA PANGIN, ANADOLU AGENCY/GETTY IMAGES) [画像のクリックで別ページへ] 文=Robin George Andrews/訳=三枝小夜子 |
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