[2024_09_29_02]核燃料初搬入 むつ中間貯蔵施設 知事交代 操業へ加速 再処理と共同歩調 崩れる(東奥日報2024年9月29日)
 
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核燃料初搬入 むつ中間貯蔵施設 知事交代 操業へ加速 再処理と共同歩調 崩れる

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 「見極められないとは言えないはずだ」。2023年8月、知事就任1カ月半の宮下宗一郎知事は報道を通じ、むつ市の使用済み核燃料中間貯蔵施設の操業時期を示すよう、事業者のリサイクル燃料貯蔵(RFS)に迫った。降って湧いたような話に、関係者は困惑した。

 原子力規制委員会の審査は大詰めだったが、貯蔵対象の核燃料を持つ東京電力ホールディングスは当時、規制委の命令で核燃料の輸送が禁じられ、貯蔵開始を見通せる状況になかった。
 しかし新知事の要請は重く、RFSは11日後に「24年度上期まで」を提示。その期限は、日本原燃・再処理工場(六ヶ所村)の完成目標と軌を一にしていた。
 中間貯蔵はこれまで、再処理工場の審査状況をうかがいながら、歩調を合わせてきた。事業は核燃料の保管が中心のため、重大事故のリスクは極めて低いとされるものの、一連の審査終結まで9年半を要した。規制当局から「牛歩戦術」と揶揄する声さえ出た。

 最長50年保管した核燃料は全て、再処理工場に送って再利用する計画。三村申吾前知事は「必ず再処理する過程に置かれたシステムの一つで、整合性が非常に問われる」とし、中間貯蔵と再処理工場の「整合性」を重視するスタンスを取った。
 貯蔵が始まっても、再処理が機能不全のままでは核燃料を運び出す先がなく中間″の意味を失う。三村前知事に呼応するように、原子力業界も両施設の完成は「整合的に」との姿勢を示していた。
 そのバランスが、23年6月の知事交代を機に崩れた。再処理工場が審査難航で27回目の完成延期は不可避−との観測をよそに、中間貯蔵は動きが急加速。RFSの新工程提示からわずか1年で、貯蔵計画公表、安全協定の協議入り、課税対象への追加、協定・覚書調印−と手続きが進んだ。

 宮下知事は「整合性」への見解を問われるたび、「先に再処理(の稼働)が必要だという要件はあるのか」と反論するなど、再処理に先んじて中間貯蔵事業を開始することへの容認姿勢を鮮明にした。原子力事業者の一人は「閉ざされていた箱を宮下知事が開けた」と指摘する。
 24年1月、大手電力の社長や経済産業相らが一堂に会した使用済み核燃料対策の協議会。電気事業連合会の公開資料には「再処理工場と中間貯蔵施設の竣工は整合的に進める」と記されていたが、池辺和弘会長(当時、九州電力社長)が口頭説明で、その一文を読み上げることはなかった。
 8月末、原燃が再処理工場の完成を2年半ほど延期すると表明。中間貯蔵の先行操業が確実となった。延期報告を受けた宮下知事は「中間貯蔵施設の操業に影響はない」と言明した。 (佐々木大輔)

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 再処理工場と歩調を合わせ操業延期を繰り返してきた、使用済み核燃粁中間貯蔵施設。同施設を巡る状況はこの1年で急展開し、26日には東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)から核燃料が初めて搬入され、事業開始が目前に迫る。その背景は何か。
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