[2024_09_30_05]核燃料初搬入 むつ中間貯蔵施設 柏崎再稼働の思惑絡む 新潟の「地元同意」に配慮 橘川・国際大学長に聞く 行き詰まる核燃料処理 時間稼ぐ仕組み構築を(東奥日報2024年9月30日)
 
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核燃料初搬入 むつ中間貯蔵施設 柏崎再稼働の思惑絡む 新潟の「地元同意」に配慮 橘川・国際大学長に聞く 行き詰まる核燃料処理 時間稼ぐ仕組み構築を

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 2023年12月、使用済み核燃料を中間貯蔵施設(むつ市)に初搬入する道が開けた。規制当局が東京電力ホールディングスに課した東電柏崎刈羽原発(新潟県)の核燃料移動禁止命令を解除し、柏崎刈羽から核燃料を送り出すことが可能になった。ただ、貯蔵事業の関係者は柏崎刈羽の再稼働に必要な地元同意を念頭に、「新潟を刺激してはいけない」と言葉を選んだ。

 核燃料の移動禁止は中間貯蔵の開始に向けた「最大の懸案」(宮下宗一郎知事)。リサイクル燃料貯蔵(RFS)の高橋泰成社長は、禁止命令が解けたら速やかに核燃料の貯蔵計画を示すと公言していた。同12月禾、高橋社長らは宮下知事の元を訪れたが、計画提示は先送り。事業関係者の聞には「(新潟県側に)柏崎刈羽を再稼働する準備と思われては絶対に駄目」と懸念する向きがあった。
 新潟県の花角英世知事はこれまで、再稼働の是非を判断するに当たって「県民に信を問う」と発言するなど、慎重姿勢を示す。岸田政権は原発の最大限活用を打ち出して再稼働を後押ししてきたが、トラブルや不備が相次ぐ東電への不信は残る。今年1月には能登半島地震で住民避難の課題が顕在化し、再稼働の行方はさらに不透明感を増した。東電は柏崎刈羽6、7号機の再稼働を目指すが、使用済み核燃料の保管プールはいずれも貯蔵量が90%超え。満杯になれば原発は動かせない。東電は中間貯蔵施設への搬出や、他号機プールへの移動で6、7号機の貯蔵率を下げる方針。

 ただ、中間貯蔵施設への初搬入は4号機の核燃料を選んだ。東電は「技術的な整理などを行った結果」とした一方で、ある自治体幹部は「6、7号機から運び出す過程で万が一、トラブルが起きれば、再稼働のリスクになるので避けたのだろう」との見方を示す。
 6月、新潟県柏崎市の桜井雅浩市長が突然、宮下知事と面会する意向を表明した。中間貯蔵事業の前提となる安全協定の議論真っただ中に、青森県庁を訪問。旧知の宮下知事に「再稼働してもすぐに止めざるを得ない」と、柏崎刈羽の差し迫った現状を伝えた。
 桜井市長は再稼働の条件として、貯蔵率を「おおむね80%以下」に減らすよう東電に求めている。8月末には11月の市長選に向けて3選出馬を表明。前回市長連では公約の一つに「核燃料の搬出促進」を掲げた経緯もあり、中間貯蔵への強い期待感をにじませた。

 9月26日、柏崎刈羽から運び出した核燃料が中間貯蔵施設に到着。初搬入に至るまでの手続きは、再稼働の是非を巡る新潟の動向にも目配りしながら進められた。
 しかし、本来は事業開始までに必要なはずの貯蔵全体計画を、RFSは3年分しか示せていない。柏崎刈羽が依然として再稼働にめどが立たないためだ。東電幹部は、中長期的な計画について「必要な検討を進めている」と述べるにとどめている。
     (佐々木大輔)

 橘川・国際大学長に聞く 行き詰まる核燃料処理 時間稼ぐ仕組み構築を

 26日に初めて使用済み核燃料が搬入され操業が迫る中間貯蔵施設(むつ市)を巡り、エネルギー政策に詳しい国際大学の橋川武郎学長は、使用済み核燃料の処理対策が行き詰まる現状の打開へ向け、「中間貯蔵で時間を稼ぐ仕組みをきっちりさせるのが大事」と提言した。

 政府は、中長期的な政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」を改定中。日本原燃・再処理工場(六ヶ所村)の操業が遅れて使用済み核燃料を搬出できず、プールでの貯蔵が容量の8割を超えている原発も多く、中間貯蔵を含むバックエンド(後処理)対策をどう描くかも焦点の一つだ。
 橋川氏は「再処理工場の廃止は非現実的だが、日本は核燃料の直接処分を認めず、全量再処理の核燃料サイクル一本やり。再処理だけでは(処理量が)足りないので、再処理と直接処分の両方を認める方向に変えるのが第一歩」と指摘。原発敷地内での乾式貯蔵を念頭に、「基本計画が目標とする2040年度を見据え、使用済み核燃料対策は当面の間、中間貯蔵で時間を稼ぐ仕組みをきっちりさせることが大事。むつの施設はオフサイト(敷地外)ではあるが、その中に位置づけられる」と述べた。

 中間貯蔵施設に核燃料を送り出した束京電力柏崎刈羽原発(新潟県)は、再稼働を目指す6、7号機の貯蔵プールが9割を超える。中間貯蔵の稼働が再稼働への一助になるとの見方に対し、橋川氏は「新潟で地元了解が進まない最大の課題は、再稼働したところで地元にメリットが少ないこと。むつ中間貯蔵に核燃料を運んだから再稼働へ進むという話ではない」と説明した。′      (佐々木大輔)
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