| [2026_02_19_09]島根原発2号機のプルサーマル計画(MOX燃料使用)の問題点 莫大な費用がかかるうえにリスクは高く事故の影響も大きい プルトニウム燃料体価格とウラン燃料体価格のコスト差は10倍 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2026年2月19日) |
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04:00 ◎中国電力のプルサーマル計画 中国電力は2026年中に島根原発2号機でプルサーマルを実施するため、規制委に対して手続きを進める方針と報じられた。島根2号機については、原子炉等規制法の手続きは2008年10月に完了していることから、工事計画認可と保安規定認可とみられる。 中国電力資料では「MOX燃料に関する『設計及び工事の方法その他の工事の計画』の認可」としている。 電気事業連合会(電事連)の「プルトニウム利用計画」では、「島根2号機は、地域の皆さまのご理解をいただきながらプルサーマルを実施することとしている。(0.3トンPut)プルサーマル導入時期は未定であるが、できるだけ早期に実施できるよう取り組む。」(電事連2025年2月14日資料より)としてきたから、いずれ申請を行うことは自明のことだった。 しかし、プルサーマル計画は巨額の費用がかかる割にリスクばかり大きく、電力会社にとっても良いことなど一つもない。 国の原子力政策、つまり核燃料サイクル計画を強行しようとした結果、こうしたちぐはぐな事態になっている。 ◎世界のプルサーマル使用動向 プルトニウムを商業原発で使用している国は、現在では日本とフランス、およびスイス、オランダ、ロシアである。 ロシアについてはベロヤロスク4号機(高速炉)において、フルMOXのプルトニウム発電を継続しているのが例外的である。 日本にはMOX燃料を製造する施設はない。六ヶ所村に日本原燃によるMOX燃料製造施設が建設中だが、稼働する時期は「2027年度中」の竣工としているが、実現の見通しは未定。 現状では全て、世界で唯一の商業用MOX燃料の輸出が可能なオラノ社の施設があるが、製造能力は高くない。 プルトニウムを商業炉で使用するプルサーマル計画は、世界の複数の国で実施されているが、その規模や状況は国によって大きく異なる。 ◎世界のプルサーマル実施国と規模 現在、商業炉でMOX燃料(プルトニウム・ウラン混合酸化物燃料)を利用している主要国は以下の通りである。 □フランス(大規模):世界で最も大規模にプルサーマルを実施している国で、20基以上の原子炉でMOX燃料を使用している。 □日本(中規模):玄海3号、伊方3号、関電高浜3・4号でMOX燃料の使用実績があり、今後も再稼働する複数の原子炉への導入を計画。 □スイス、オランダ(小規模):スイスでは2基の原子炉、オランダではボルセラ原発(1基)でMOX燃料の使用を継続している。 □ロシア:ベロヤルスク4号機(BN-800)で2022年より炉心全体の100%をMOX燃料とする「フルMOX」運転を世界で初めて実施中 ◎日本の製造施設とMOX燃料供給源 日本国内には現在、商業用のMOX燃料を製造できる稼働中の施設は存在しない。 六ヶ所村では、日本原燃によるMOX燃料加工工場が建設中である。 公式な竣工時期は「2027年度中」とされているが、これまでに20回以上延期されてきた経緯もあり、実現の見通しは不透明である。 このため、現状で日本が使用するMOX燃料は全て、フランスのオラノ(Orano)社のメロックス工場に依存している。 同社は西側諸国で唯一、商業用MOX燃料の輸出が可能な施設であり、世界の需要を一手に引き受けているため、製造から日本への輸送までには非常に長い期間を要する。 ◎MOX燃料のコスト問題 ではウラン燃料を使う計画で設計された島根原発2号機のMOX燃料の使用は、どのくらいコスト増になるのか。 コスト比較の対象として原子力資料情報室の論文「MOX燃料のコストはおいくら?」を使う。 プルトニウム燃料体価格とウラン燃料体価格のコスト差は10倍としている。 つまり、燃料1体あたりの重さを約170kg(BWR用)、 価格をウラン15万円/kg、MOX150万円/kgとして計算。 □全てウラン燃料の場合(4サイクル) ウラン燃料のみのコスト 年間交換体数140体×170kg×15万円=約35.7億円 □プルサーマル(MOXは3サイクル)のコスト 年間の交換体数 156体(ウラン94+MOX62) ウラン燃料代 94体×170kg×15万円=約24.0億円 MOX燃料代 62体×170kg×150万円=約158.1億円 年間の合計燃料費 上記の合計約182.1億円 □プルサーマルを行った場合は年間燃料コスト182.1億円 それに対してウラン燃料のみの場合は35.7億円である。 年間のコスト差は146.4億円に達する。余り大きな差でないと感じるかもしれないが、これを20年続ければ2,928億円、つまり島根原発2号機の建設費2,100億円をも超える。 これだけではない。MOXの使用済燃料は全部原発に貯蔵するほかない。再処理するあてもないからだ。 そうすると運転した後に毎年入れ替える燃料体が「140体」から「156体」へ、年間約11%増加する。 島根2号機の使用済み燃料プールには限りがある。プルサーマルを行うことでウラン燃料だけの場合よりも約1割早いスピードでプールが満杯になる計算だ。 MOX燃料はウラン燃料よりも崩壊熱が高いため、プールで冷やす期間が数倍(数十年単位)長くなる可能性がある。当然リスクもそれだけ高い。 東電福島第一原発事故で4号機の使用済燃料が危機的状況だったことを忘れたのか。 その中に大量のMOX燃料が入っていたら、今頃、東日本は潰滅していたかもしれない。 発熱量が十分大きければプールへ注水する前に燃料が露出する可能性があった。 また、その間の電気代やメンテナンス代もすべてコストとして積み上がる。 この莫大な燃料費の差額は100%消費者に転嫁される。寿命の短い燃料を導入することで島根2号機のプールが満杯になる時期が何年早まるのか。 その後の行き先は確保されているのか。もちろん、その先などは存在しない。 ◎安全性についてのリスク MOX燃料はウラン燃料体のみの場合に比べて、炉心安定性が悪く、中性子の性質が異なるため、制御棒の効きが悪くなる。 具体的にはプルトニウム同位体(Pu-239, Pu-240, Pu-241等)を多量に含み、遅発中性子割合が小さく、反応度制御余裕が小さいため出力分布が不均一になりやすい。 ◎燃焼度が進むと放射毒性が著しく高まる MOX燃料にはプルトニウムが多く含まれ、そのためプルトニウムおよびアクチノイド核種の放出量が増加する。 同じ事故頻度を仮定しても、放射線被ばくによる健康影響(潜在的がん致死リスク)が増大する。 特に、プルトニウムは少量でも高い内部被ばくリスクをもたらす核種であり、MOX燃料事故では、公衆の長期的健康影響がより深刻になる可能性があると指摘されている。 プルサーマル計画に未来などない。 以下の論文などは、それを示す好例だ。 参考:Lyman, E. S. (2001)Public health risks of substituting mixed-oxide for uranium fuel in pressurized-water reactors. |
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