[2026_01_10_01]<社説>中部電力の不正 原発安全性の前提壊した(北海道新聞2026年1月10日)
 
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<社説>中部電力の不正 原発安全性の前提壊した

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 中部電力が浜岡原発(静岡県)の再稼働に向けた原子力規制委員会の審査で、耐震設計に関わるデータを不正に操作していたことが明らかになった。

 想定される最大の地震の揺れである「基準地震動」を策定する際、過小評価するため多数のデータから都合の良い地震波を選んでいた。だが、審査会合では平均に最も近い地震波を選んだと虚偽の説明をしていた。
 安全性の根幹に関わる最重要データだ。それをゆがめることは原発審査の前提を壊し、信頼性は根底から揺らぐ。規制委の山中伸介委員長は会見で「明らかに捏造(ねつぞう)。安全規制に対する暴挙だ」と批判し、審査を白紙にする考えを示した。

 浜岡原発は南海トラフ地震の想定震源域に立地することから危険性が指摘され、東日本大震災直後には政府が全面停止を要請した経緯がある。中部電に原発を扱う事業者としての資格があるのか、厳しく問われる。
 中部電は2014〜15年に浜岡原発3、4号機の再稼働審査を申請した。規制委は中部電から提出されたデータを基に議論を進め、23年に基準地震動を「おおむね了承」と判断した。

 だが、25年2月に外部から不正を疑う通報が規制委にあった。中部電が社内調査し、原子力土建部の社員数人が関与して基準地震動を意図的に過小評価した疑いがあると発表した。
 狙いは何か。組織的に行われてはいないか。不正を機に設置した第三者委員会による徹底した事実解明が欠かせない。

 中部電では昨年11月に同原発の安全対策工事をめぐる不祥事があったばかりだ。経営陣の責任は極めて重大である。
 深刻なのは、外部通報があるまで規制委が捏造(ねつぞう)に気付かなかったことだ。原発審査は電力会社が提出するデータの虚偽を想定しない性善説に立っており、その限界が浮き彫りになった。

 山中氏は他の電力会社について「審査、検査の中で類似不正の兆候がない」として調査しない方針を示した。それで規制委が掲げる「世界で最も厳しい安全基準」を担保できるのか。審査の在り方を検証し、抜本的な見直しを検討するべきだ。
 政府は原発の最大限の活用を打ち出し、再稼働の動きを進めている。東京電力柏崎刈羽原発は20日に再稼働する。北海道電力泊原発3号機は昨年末に地元同意の手続きが終わった。
 だが中部電の不正で不安を募らせる住民は各地に多いのではないか。電力事業者への不信感は高まっている。原発のリスクを改めて問い直す必要がある。
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