[2025_11_14_06]【柏崎刈羽原発・県民意識調査】結果は“総意”となり得るのか?識者に聞く「読み解き方」 東京電機大・寿楽浩太教授(新潟日報2025年11月14日)
 
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【柏崎刈羽原発・県民意識調査】結果は“総意”となり得るのか?識者に聞く「読み解き方」 東京電機大・寿楽浩太教授

 13:30
 東京電力柏崎刈羽原発の再稼働問題を巡り、県が実施した県民意識調査の結果が公表された。
 花角英世知事が再稼働の是非について自身の判断をまとめるための材料となる。どう読み解けばいいのか。
 原子力と社会の関係に詳しい東京電機大の寿楽浩太教授(45)=科学技術社会学=に聞いた。(報道部・山田功)

問い:調査では、再稼働の条件が現状で整っていないとする回答が6割に上りました。地域別でみると、原発が立地する刈羽村で条件が整っているとみる意見が50%に達した一方、柏崎市は半数を下回りました。
答:「刈羽村は他の地域と比べれば肯定意見の割合が高いと言えるが、否定的な意見も48%で拮抗(きっこう)している。原発のお膝元で特に関心、関与の強い地域でも十分な合意は形成されておらず、住民の半数しか現状での再稼働を容認していないとも解釈できる」

問い:「東電が原発を運転することは心配だ」との回答は全県で約7割、刈羽村でも半数超の52%でした。
答:「東電が県民に信頼される実績を積み上げられていないということだ。そもそも東電福島第一原発で世界最悪レベルの事故を起こした当事者であり、新潟には電力を供給してもいない。大きなマイナスからスタートしている上、これまでの準備段階でも不祥事、トラブルを繰り返してきたことに厳しい目が向けられている」
 「一方、原発は半年、1年、3年と問題なく継続的に運転できれば一定の信頼が培われていく面がある。実際に動かした後の実績を見せてもらう方に進むか、まだ準備に汗をかいてもらうか。まさに知事の大きな判断になる」

問い:原発事故と新潟県特有の豪雪など自然災害が重なる「複合災害」へのさらなる備えや、避難道路の整備などが必要だとする意見は、共に9割に上りました。
答:「昨年の能登半島地震でも液状化などの被害があり、自然の脅威を感じただろう。県民の心配は切実だ。事故時の避難は簡単ではなく、農業、観光への影響、風評被害も心配しているのがうかがわれる」
 「一方で別の質問への回答をみると、相当数が、一般論として原発再稼働が電力の安定供給や脱炭素につながるとか、地域経済にプラスの点があるとみている。県民総体として再稼働問題の論点をよく捉え、それだけに苦悩しているのだろう。この調査結果をもって、県民の総意が再稼働に賛成とも、反対とも結論づけられない」

問い:花角知事は調査結果も踏まえて再稼働を認めるか否かを近く判断し、それに対する県民の意思を確認するとしています。
答:「どのような方法で県民の意思を確認するのかは、まさに知事の政治家として判断だ。ただ、来年の知事選に出馬するならば、最終的にはそこで県民の審判が下るのではないか」
 「むしろ気になるのは、知事が示す『判断』の中身だ。東電にフリーハンドで再稼働を認めるでも、一切認めないでもなく、『こういう条件ならこうだ』と東電、国と交渉し、県民に提示することもできるはずだ。県民の苦悩や不安に応えつつ、安全を守る知恵が求められる」
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