[2025_09_04_03]社説:原発地域の支援 ぬぐえない根本リスク(京都新聞2025年9月4日)
 
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社説:原発地域の支援 ぬぐえない根本リスク

 16:05
 多くの懸念を抱える原発再稼働を進めるための「地ならし」であるのは明らかだ。
 政府が、原発立地地域に財政支援する対象を、現行の半径10キロ圏から30キロ圏に拡大すると決めた。

 2011年の東京電力福島第1原発事故後、避難計画策定が求められる地域は、それまでの10キロ圏から30キロ圏に広がった。だが立地振興に関する特別措置法による国の支援対象は10キロ圏のままだった。避難道路や防災施設の整備などで負担を強いられる自治体から、地域拡大を求める声が上がっていた。

 特措法の対象になると、道路や港湾、教育施設など「特定事業」にかかる国の補助率が50%から最大55%にかさ上げされる。さらに地方債を使えば、自治体の当面の負担は低減される仕組みだ。
 対象地域は、現在の14道府県76市町村から22道府県の約150市町村に広がる。該当する自治体の多くは「要望が認められた」と歓迎を表明。福井県の美浜原発から30キロ圏にある滋賀県、大飯と高浜の原発から30キロ圏にある京都府の両知事も評価する姿勢を示す。

 留意すべきは、国が対象地域の拡大に踏み込んだ背景である。
 2月に閣議決定した新たなエネルギー基本計画では、従来の「可能な限り原発依存度を低減する」との表現を削除し、原発の「最大限活用」へと方針転換した。2040年度の電源構成に占める原発比率を2割程度に設定している。

 達成には30基以上の稼働が必要になる。国内の33基のうち再稼働中は14基にとどまる中、国の環境整備の一手に違いない。
 特に、東電が早期の再稼働を目指す柏崎刈羽原発では、地元・新潟県の同意が焦点となっている。

 国策で原発を進める以上、事故時の避難対策に責任を持つのは当然だろう。だが事故の恐れをゼロにはできない原発の根本リスクに向き合うことは別次元の問題だ。
 能登半島地震で浮き彫りになった複合災害をはじめ、想定を超える事態や、見通しが立たない使用済み核燃料の処理、安全保障上の懸念…。こうした難題を踏まえれば、原発回帰へ公費を注ぐことには十分な議論が欠かせない。

 かつて「最も安い」とされた原発は、廃棄物処分や事故対策を考慮すれば、優位性を失っている。
 脱炭素の命題を受け、日本の電源をどうするかは喫緊の課題だ。洋上風力発電の先行事業の頓挫で、エネルギー戦略の再考が問われる中、再生可能エネルギーの拡大こそ優先すべきである。
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