[2024_07_02_01]候補地選び、懸念先送り 寿都・神恵内の文献調査報告書 技術的審議、4日にも終了(北海道新聞2024年7月2日)
 
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候補地選び、懸念先送り 寿都・神恵内の文献調査報告書 技術的審議、4日にも終了

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 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定に向け、後志管内寿都町と神恵内村で行われている文献調査の報告書案の審議は最終盤に入った。
 4日の経済産業省の作業部会で報告書案の修正が了承されれば、原子力発電環境整備機構(NUMO)による全国初の文献調査報告書は事実上完成する。
 だが、審議で示された活断層や地震などの懸念は、第2段階の概要調査に先送りされ、不適地を除外する基準や調査手法も不明瞭だ。
 10万年間の安全を担保するための報告書が不十分な形でまとまれば、禍根を残す恐れがある。

 「NUMOや国は『確認できないものは次段階調査で確認する』という方針で首尾一貫していた」。経産省地層処分技術作業部会のある委員は、審議をこう振り返る。
 2月に公表された国内初の文献調査報告書案は寿都町全域と神恵内村の南端の一部を候補地とした。
 作業部会の計4回の審議では多くの安全上の懸念事項が指摘されたが結局、候補地の範囲は変更されない見通しだ。(中略)

 神恵内村では近隣の熊追山(同管内泊村)の火山活動時期が問題視された。
 参考人の岡村聡北海道教育大名誉教授(地質学)らは「除外する火山の基準に該当する」と批判。(中略)
 作業部会は「国内に地層処分の適地はない」とする岡村氏ら地質学者グループの声明も退けた。
 作業部会では委員の発言時間は議題ごとに2〜3分に限られ、「懸念事項を先送りする当否を議論する十分な時間がなかった」(委員)という。
 概要調査は約4年間のボーリング調査などで地質を調べるが、寿都・神恵内の地下に広がる強度の低い水冷破砕岩などの詳細な把握は現実的に困難とみられる。
 ある委員は「概要調査で候補地の安全評価まで行うことは時間的に厳しい。どのような調査を行うのか、事前に十分な準備が重要」と注文を付ける。(中略)

 早稲田大の松岡俊二教授(環境経済・政策学)は作業部会の審議に対し「『分からない』というグレーな部分を全て先送りにするやり方を1度でも許せば、玄海町でも同じことが起きるだけでなく、概要調査のときも歯止めがきかなくなる」と指摘。「科学的・専門的観点からの検討をあいまいにしたまま報告書が完成すれば科学の政治利用にもつながりかねない」と危惧している。
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