[2024_05_25_01]【霞む最終処分】(40)第7部 原発構内の廃棄物 東電対応その場しのぎ 早急に処理の道筋を(福島民報2024年5月25日)
 
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【霞む最終処分】(40)第7部 原発構内の廃棄物 東電対応その場しのぎ 早急に処理の道筋を

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 東京電力福島第1原発で出る放射性廃棄物の処分方法、処分先は法律などで決まっていない。東電は廃炉作業の進捗(しんちょく)に伴い、次々と発生する膨大な廃棄物への対処を迫られている。「対応が遅い。廃棄物対策を廃炉に向けた主要な課題と捉えて取り組む必要がある」。廃止措置工学を専門とする福井大客員教授の柳原敏(日本原子力学会廃棄物検討分科会主査)は、東電の現状の対応を「その場しのぎ」と指摘する。
 福島第1原発の廃炉には事故発生から30〜40年を要するとされている。東電は廃棄物の発生量の実績や今後見込まれる量を計画に反映させながら保管管理している。ただ、実際に発生が予測される廃棄物の量と対策については、10年ほど先までしか触れていない。
 廃炉の完了を見据えた処理・処分の方法は定まらず、「第1原発の廃棄物対策の将来像は、ぼんやりとしている」。東電の広報担当者は苦い表情を浮かべる。
 海洋放出が始まり、処理水の保管量が減少に転じた一方、放射能レベルの高い汚泥などの廃棄物は増え続けている。東電は保管先を増設するなどの「対処療法」を講じながら、逼迫(ひっぱく)する事態を何とかやり過ごしているのが実情だ。廃炉作業がさらに進めば、1〜3号機からの取り出しが計画されている溶融核燃料(デブリ)、原子炉建屋などを形作る各種の設備・機器が、取り扱いのより難しい廃棄物として表面化してくる。

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 廃棄物の対応が後手に回り続ければ、廃炉作業そのものの足を引っ張りかねない。「デブリの取り出しを進めながら、廃棄物の総量や対策を並行して考えないと大変なことになる」。先行きを不安視する声は東電内部からも上がっている。
 燃料デブリや使用済み核燃料を含む福島第1原発の放射性廃棄物について、福島県は県外で処分するよう国に求めているが、見通しは立っていない。柳原は廃炉後の原発の敷地を更地とするのか、建物を残すのかの方針が定まっていない現状を問題視する。「逐次的な対応ではなく、廃炉後の敷地の利用方法などエンドステート(最終的な状態)を見据えた議論を急ぐべきだ」と訴える。廃炉完了までの具体的な筋書き(シナリオ)を示し、廃棄物対策に資金や人材を積極的に投じる必要があるとした上で「(事故炉の廃炉は)前例がないのだから、なおさら先手を打たなければならない」と繰り返した。

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 柳原らが所属する日本原子力学会の廃棄物検討分科会は、2020(令和2)年に福島第1原発の廃炉に伴う廃棄物管理対策に関する報告書を取りまとめた。廃炉作業が完了し、敷地を再利用できるようになるまでには最短でも100年以上かかると試算。その場合、最大で約780万トンもの放射性廃棄物が出ると推計した。一般的な商業原発1基の廃炉で発生する放射性廃棄物が「多くて数万トン程度」とされているのと比べてはるかに甚大な量だ。
 報告書は原発由来の廃棄物を巡る国の対策について「先送りされる傾向がある」と厳しい目を向ける。その上で「第1原発では先送りすれば、廃炉完了の時期が延びることになる」と、問題が困難であろうとも、目をそらさぬよう警告している。(敬称略)

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