[2024_03_08_06]宇宙に送られる「クマムシ」 人体の旅行を遺伝子レベルで解明 過去に無事帰還、どんな過酷な環境でも死ぬことない最強生物 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その534 島村英紀(地球物理学者)(島村英紀2024年3月8日)
 
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宇宙に送られる「クマムシ」 人体の旅行を遺伝子レベルで解明 過去に無事帰還、どんな過酷な環境でも死ぬことない最強生物 警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その534 島村英紀(地球物理学者)

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 月や火星に生物がいるか(いたか)どうかが問題になっている。地球外生命体の探査だ。
 しかし、月には人間が地球から送り込んだ数千もの生物がすでにいる可能性があるのだ。
 イスラエルはガザに対する残虐な仕業で問題になっているが、じつは宇宙探査では日本よりも進んでいる。
 5年前の2019年、イスラエルの民間団体が打ち上げた月探査機「ベレシート(創世記)」が月面に軟着陸を目指しながら、墜落した。月面から高度150メートルの高さを飛行していたベレシートの速度は、時速500キロのまま月面に激突して、木っ端微塵に砕け散った。
 この探査機にはクマムシが数千匹格納されていた。
 クマムシは体長1ミリにも満たない小さな生き物だ。大きさ0.05から1.2ミリの生物で、足が8本ある。世界中に住む。
 クマムシと一口にいっても、合計1265種が報告されている多様な生き物で、熱帯から極地、深海から高地まで、ほぼあらゆる場所に生息している。
 とても生命力が強い。150度の高温からマイナス200度を下回る低温、真空から7万5000気圧の広い圧力の過酷な環境に耐える。
 放射能にも強い。人間の致死量をはるかに超える放射線を浴びても平気だ。
 クマムシは冷凍された状態で送られ、そこで蘇生(そせい)して宇宙空間の放射線にさらされても平気だ。放射線には強く、4400グレイのガンマ線にも耐える。
 ちなみに40〜5万グレイの線量は、ほぼあらゆる物質を殺菌できるもので、人間なら10グレイでも、たちまち死んでしまうほどだ。
 極端な乾燥で脱水状態にされても「乾眠」という無代謝の休眠状態になって、体重の85%ある水分を3%以下までに減らす。しかし、水を与えると息を吹き返す。クマムシは10年間の無代謝状態からも復活できる。
 クマムシが送られる理由は変化があったクマムシの遺伝子を特定するためだ。宇宙空間での人体の旅行を遺伝子レベルで助けようというわけだ。
 いままでもクマムシは宇宙に送られた実績がある。2007年にロシアの衛星「フォトンM3」に乗せられた2匹のクマムシは10日後に無事に地球に帰還した。
 宇宙の真空と放射線に耐えて、生殖能力も失わなかった。
 乾燥・低温・高圧・真空・放射線など、どんな過酷な環境でも死ぬことがない最強生物だ。
 月の気温は、夜になればマイナス170〜マイナス190度、昼は100〜120度にもなり、地球とはまるで違う。
 なお、生物を月に送り込んでも国際法には違反しない。イスラエルはこれを狙った。ただし火星の場合は衛生や殺菌について厳格なルールが定められているので無理だ。
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