[2024_01_28_05]東北電の原発費用、電気料金を底上げ 女川2号機再稼働しても…引き下げ効果の約4倍に(河北新報2024年1月28日)
 
参照元
東北電の原発費用、電気料金を底上げ 女川2号機再稼働しても…引き下げ効果の約4倍に

 06:00
 東北電力の原発関連による電気調達費用は維持管理コストを含め年間1617億円に上ることが、龍谷大の大島堅一教授(環境経済学)の分析で分かった。今年5月以降に予定する女川原発2号機(宮城県女川町、石巻市)の再稼働で、同社が主張する料金原価の引き下げ効果(年間372億円)の約4倍に相当する。標準家庭(使用電力量月260キロワット時)で試算すると、再稼働による料金下げ効果は月額140円の一方、原発を維持することによる費用は月額611円となる。

 龍谷大・大島教授が分析「不合理は明らか」

 電気料金に再稼働による低減分を上回る原発関連コストが含まれている実態は周知されておらず、大島氏は「原発を維持するために料金を底上げしている。東北電は再稼働で安くなると言うが、実際は原発維持にそれ以上の負担をしていて割に合わない」と指摘する。
 東北電が昨年6月に家庭や商店向けの規制料金を引き上げる際、電気料金の原価として国の審査会合に提出した資料などを分析した。根拠となった資料は、全て東北電や経済産業省のホームページで誰でも確認できる。

 [電気料金の原価]規制部門の電気料金を引き上げる際、電力会社は燃料費や修繕費、人件費、事業報酬といった電力を生産して販売するために必要な費用「総原価」と電気料金収入が等しくなるように料金を設定し、国の認可を得る必要がある。東北電力の昨年6月の値上げの場合は原価の算定期間は2023〜25年度。女川原発2号機が24年5月以降に再稼働しても、直ちに電気料金が引き下げられるわけではない。
 東北電によると、電力供給に必要な人件費や燃料費といった費用の合計となる「総原価」は年間1兆9743億円。女川2号機の再稼働により、市場からの電力調達を減らすなどして、1年につき372億円を削減できると見込んだ。
 削減分を同社が想定する年間販売電力量(687億キロワット時)で割った単価は1キロワット時当たり0・54円。料金の引き下げ効果は計算上、標準家庭で月額140円になる。
 一方、東北電が自社の原発の減価償却や修繕などにかける費用は年間1352億円。さらに、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)と日本原子力発電東海第2原発(茨城県)から電力を購入する契約を結んでおり、両原発が停止中で受電量がゼロでも年間265億円を払う。
 これらの「原発の電気を調達する経費」は年間計1617億円に上り、年間販売電力量で割った単価は1キロワット時当たり2・35円。標準家庭は原発の費用として、月額611円を支払っている計算になる。
 消費者庁の電気料金アドバイザーも務める大島氏は「月140円安くなるために、611円を支払うことが不合理なのは明らかだ」と語った。
KEY_WORD:ONAGAWA_:KASHIWA_:TOUKAI_GEN2_: