[2024_01_27_04]「緊急時の被ばくに我々は関知せず」と規制庁が公言 「防護措置をしない場合」は甘々でも大量被ばく 首長は「再稼働は住民の被ばくが前提です」と住民に明言すべきだ 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕(たんぽぽ2024年1月27日)
 
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「緊急時の被ばくに我々は関知せず」と規制庁が公言 「防護措置をしない場合」は甘々でも大量被ばく 首長は「再稼働は住民の被ばくが前提です」と住民に明言すべきだ 上岡直見〔環境経済研究所(技術士事務所)代表〕

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 2024年1月24日の原子力規制委員長記者会見(※1)で驚くべき発言があった。
 能登半島地震の現状からみて、屋内退避や避難などの前提がことごとく崩れたことに即して、ある記者が「逃げることができなくなった方は、万が一のときは被ばくしてください、それを覚悟してくださいという指針であるという理解になるが」と質問した。
 これに対して規制委員長は「基本的な原子力災害が起きたときの取るべき対策について、指針の中でこうしてほしいということをお願いをしている」「基本的に我々は基準を満たしていれば許可をいたしますけれども、稼働について何か我々が、その許可をするということはございませんし、防災基本計画を立てられるというのは、自治体と内閣府の連携によって立てていただくというのが基本的なところかというふうに思います」と回答している。
 つまり稼働するかどうかは事業者の勝手で、それによって被ばくが発生しても規制委員会は「こうしてほしい」というお願いだけで、実際にどうなるかは関知しないという無責任な回答である。
 こうした責任論はともかくとして、もし本当に緊急事態で逃げられない場合にどのくらい被ばくが予想されるのだろうか。規制庁は新規制基準に適合した原発について最大でどのくらいの放射性物質の放出があるかのシナリオに基づいて、原発周辺での被ばくをシミュレーションしている。(※2) ただしこれはPWRに対してでありBWRについての検討はない。
 この検討の中で「防護措置をしない場合」というケースが、すなわち屋内退避も避難もできない場合にあたる。すると5km圏では、全身実効線量で300ミリシーベルト、甲状腺等価線量で400ミリシーベルトなどというとんでもない数値になる。それ以遠でも一般公衆の法定被ばく限度の年間1ミリシーベルトをはるかに超える被ばくが発生する。
 このシミュレーション自体も、さまざまな条件を甘く設定した結果であり批判すべき点があるが、それでさえもこの結果である。
 規制庁は法定被ばく限度を無視して、ICRPを引用して年間100ミリシーベルトまでは明確な健康影響は認められないとして再稼働を容認する条件を設定しているが、それさえも大きく突破する数値である。規制庁の資料だけによってもこのような矛盾が噴出しているが、再稼働に合意している県・市町村の首長は「再稼働は住民の被ばくが前提です」と住民に明言すべきである。
 すでに再稼働済みの自治体では緊急時対応について国の原子力防災会議で「具体的かつ合理的」とお墨付きをもらっているはずだが、紙の上の話だけであり実効性は期待しようがない。防災基本計画は自治体と内閣府の連携で、規制委員会は知らんというなら自治体は「これが避難計画だ!」と白紙の計画を内閣府に叩きつけてはどうか。

 (※1)https://www.nra.go.jp/data/000467076.pdf
 (※2)https://www.da.nra.go.jp/file/NR000056048/000245214.pdf
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