[2024_01_05_01]指標 能登半島地震 M7級想定できた 沿岸活断層、認定急げ(東奥日報2024年1月5日)
 
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指標 能登半島地震 M7級想定できた 沿岸活断層、認定急げ

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 過去100年間の日本の活断層地層としては最大であるマグニチュード(M)7・6の能登半島地震が1日、起きた。これは決して予測困難で珍しい大地震ではない。能登半島北岸の直線的な海岸線が、沿岸の海底にある活断層の活動によってできたものであることを知る研究者は多かった。地震は当然想定されるベきだったが、それができず不意打ちの形になってしまった。

 こうした沿岸海域の活断層の認定は急務である。まずは沿岸海底の詳しい測量をして、陸上の活断層と同様な活断層図を整備すべきである。
 1995年の阪神大震災以後、陸上だけでなく海域の活断層調査も進み、活断層が起こす地震に備える取り組みが進んだが、海岸沿いの海域の活断層は盲点である。
 その理由は、こうした海域の活断層認定の難しさにある。陸上の断層は過去の活動で形成された地形を手掛かりに見つけられるし、地下を掘削して調べることも可能だ。
 一方、海域では探査船から音波を出し、海底下の地質構造を調べる。だが、能登半島北岸のように海岸近くにある活断層を音波探査で調べることは難しい。活断層であるかどうかを判定できる新しい堆積物が薄いために見極めが難しい上、漁業への影響も懸念される。
 こうした問題を補うため、最近は、海底でも陸上と同じように地形から活断層を認定する技術が進んだ。能登半島では後藤秀昭・広島大准教授らが調査し、北岸をほぼ東西に走る長大な海底活断層の存在を指摘していた。これが今回の地震を起こした断層とみられるが、いまだに音波探査による地質調査が重視され、後藤氏らの結果は活断層図に反映されていない。

 さらにもう一つ問題がある。海底活断層は短く認定されがちで、能登半島北岸沖にある断層の長さも20キロ程度の短い断層に分割されていた。短い断層は大地震を起こさないとされるため、危険を見逃すことになる。
 2007年の新潟県中越沖地震も海底活断層によるものだったが、東京電力柏崎刈羽原発(新潟県)を巡り東電や政府は音波探査を過度に重視したため、この活断層を大幅に過小評価していた。
 改めて、長大な断層が起こす地震について正しく認識したい。16年の熊本地震もその例であり、M6・5の前震の後にM7・3の本震が起きた。能登ではこの数年間、地震活動が続き、今回の地震につながった。

 このように相次ぐ地震は活断層が引き起こす一連のものである可能性が高い。熊本も能登も、前震でも大きな被害が起きたことを考えると、活断層は決して千年に1度だけ大地震を起こすわけではない。
 活断層の公式評価をまとめている政府の地震調査委員会は、こうした一連の活動について分かりやすく説明し、国民の防災意識を高めてほしい。

 名古屋大教授 鈴木康弘氏 <すずき・やすひろ 1961年愛知県生まれ。東京大大学院修了。2004年から現職。日本活断層学会長。専門は変動地形学、災害地理学>
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