[2023_12_30_01]関東で繰り返される「海溝型地震」の恐怖 関西で唱えられる“南海トラフ2038年説”の真偽 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その524 島村英紀(地球物理学者)(島村英紀2023年12月30日)
 
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関東で繰り返される「海溝型地震」の恐怖 関西で唱えられる“南海トラフ2038年説”の真偽 「警戒せよ!生死を分ける地震の基礎知識」その524 島村英紀(地球物理学者)

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 関東大震災(海溝型地震、震源・相模トラフ)から100年が過ぎた。
 2023年は改めて地震を意識させられる年だった。
 2011年に発生した東日本大震災を受け、政府が2014年に発表した地震に関する被害想定、なかでも関東に関する首都直下地震では、「今後30年以内に70%」の確率で起きるとされた。あと20年程度で実際に起きるのか。政府は2024年度に被害想定を新たに見直すことを決めている。
 首都直下も気にはなるが、海溝型地震は繰り返すことが分かっている。1703年の、房総半島南方沖(千葉)が震源とされる元禄関東地震はマグニチュード(M)8.1〜8.2とされ、関東大震災(M7.9)よりも地震のエネルギーは倍以上も大きかった。
 駒込(東京)近くの六義園を津波が襲い、できたばかりの日本庭園をむちゃくちゃにした。徳川五代将軍綱吉が、7年の歳月をかけて完成させたばかりだった。
 鎌倉(神奈川)の鶴岡八幡宮の二の鳥居まで津波が来た。関東大震災ではここまでは来なかった。
 関東が巨大地震の再来におびえているのと同様に、関西も南海トラフ地震を恐れている。大阪も東京の一部と同じ海抜が低い「水の都」だからだ。
 「2038年に南海トラフ地震が起きる」という話がある。京都の学者たちが唱えている説だ。それまでは枕を高くして寝てもいいという安心情報として受け取られかねまい。
 その説では高知県・室津港のデータを過去3回使っている。計算が室津港を管理していた江戸時代の役人の測量値を元データにしている。
 だが、江戸時代、室津港では毎年のように工事が繰り返されていた。人工的に港の深さが変えられた可能性がある。そのうえ他のデータはなく、学問的な根拠は薄弱だ。
 米国パークフィールドで正確に20〜25年ごとに地震が起きていて、2001年にはいよいよということで学者が待ち構えていたが、空振りに終わった。その影響も多分にあり、2038年南海トラフ地震説を多くの学者は信じていない。
 そもそも南海トラフ、首都直下型などがいつ襲って来るかは現在の学問では分からない。南海トラフは38年まで待てないかもしれない。いずれ襲って来ることだけは確かなのである。

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