[2023_12_25_04]東海第二原発再稼働が迫るなか 防潮堤で欠陥工事が発覚(内部告発) (2回の連載) 東海第二原発は「耐震性能がギリギリ」 60年超運転で上昇する原発過酷事故のリスク 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年12月25日)
 
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東海第二原発再稼働が迫るなか 防潮堤で欠陥工事が発覚(内部告発) (2回の連載) 東海第二原発は「耐震性能がギリギリ」 60年超運転で上昇する原発過酷事故のリスク 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

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 1.東海第二原発と「GX法」の成立

 2018年11月7日、現存する日本で最も古い沸騰水型軽水炉、東日本大震災で被災した茨城県東海村の日本原電(以下、原電)東海第二原発の再稼働と20年の運転延長が許可された。
 原子力規制委員会(以下規制委)は、老朽化がすすみ燃えやすいケーブルを使っているなど、現在の法令では基準に適合せず、震災で揺さぶられ津波に被災した原発さえも「運転してよい」と、許可を出した。

 東海第二は2018年11月27日で運転開始40年を経過した。この日までに許可されなければ廃炉になるはずだった。
 規制委は原発の安全性よりも原電の存続を優先した。
 2023年5月31日、今度は「長期停止期間」を運転期間から除外し、その分だけ運転時間を延長できる「GX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法」なる法律が成立した。
 これにより東海第二原発についても、現在の計画ならば14年余りの期間を、追加で運転延長できる法的根拠ができた。
 なお、この法律は9月12日に、2025年6月6日に施行する政令を閣議決定している。施行されるまでまだ時間があることは幸いだ。
 批判を強めて、東海第二原発など、一つ一つの原発の再稼働や運転延長を止める取り組みが必要だ。

 2.耐震性の欠如と過酷事故の危険性

 東海第二原発については、原子力安全・保安院時代に行われた「耐震バックチェック」で「耐震性能がギリギリ」であることが既に明らかになっている。
 「クリフエッジ」と呼ばれる破壊限界点は東海第二については「1038ガル」と評価されたのに対し、再稼働申請に際して原電が設定した基準地震動は「1009ガル」と、97%を超えている。すなわち「余裕」がわずか3%弱。
 原子炉圧力容器を支える「スタビライザー」と呼ばれる装置は、対震限界点を超える危険性が高く、その場合、原子炉は上部の支えを失う恐れがある。
 原子炉圧力容器が想定外に横に変位すれば、接続されている配管のうち小口径のものが引きちぎられたり、制御棒が正常に入らなくなったりといった不測の事態が起こり得るのである。
 地震動の評価についても、発生する可能性のある地震の規模をピンポイントで「当てる」ことなどできないことは、地震学の常識だ。
 即ち、あらゆる予測には「ばらつき」「不確かさ」が存在する。これを考慮すれば、わずか3%程度の差では明らかに過小評価だ。
 ところが規制庁は、市民や国会議員による数次にわたる院内集会や規制庁への行政不服審査口頭意見陳述に対する回答などで「基準地震動を超える地震は想定していない、する必要もない」「基準地震動を超えたとしても直ちに重大な損傷を引き起こす破壊は生じない。なぜなら余裕があるから」と、回答している。
 基準地震動は事業者が決めた値である。
 しかし規制庁は「規制側である」との公的立場も、規制値を定めた客観的立場も取らない。
 「基準を超えてもすぐには壊れない」が、規制側の言うべきことではないことは「速度を超過しても直ちに事故につながるわけではない」と警察が言うわけがないことでもわかるだろう。規制側が事業者の主張代弁者になっている。 規制庁は「規制基準適合性審査を通過させること」を目的として、事業者の立場で審査していることが露骨に見られるのである。(下)に続く

 3.東海第二原発防潮堤工事で重大な「施工不良」が発覚

 「コンクリート打設不良、鉄筋曲がり、基礎が岩盤に到達していない、安定液の比重が適切でない」そんな重大問題が起きていたのに、原電は、あたかも順調に工事が進んでいるように装っていた。
 原電によると、6月に事態を把握し工事を中断していた。
 しかしこれを規制庁に報告したのは10月16日である。この間、調査と称して隠蔽し続けていたことになる。
 17日になって、記者会見を開き、安全対策工事で施工不良箇所が見つかったため一部の工事を今年6月から中断していると発表した。
 この先、原因の調査と来年9月までに完成させるとする工事計画に影響がないかなどを調べるという。
 施工不良があった場所は津波対策として新設している「鋼製防護壁」の柱。
 「鋼製防護壁」とは地盤が悪いために基礎を打てないので設置される長さ80mの構造物。地下約50m余りの2本の鉄筋コンクリート製の柱だけで支える構造になっている。
 事態が明るみになったのは、今年6月、南の柱で内側の作業をするため掘削作業を行っていたところ、コンクリート材の欠損や鉄筋の変形が見つかった。
 具体的には、地下10mから40mの間の複数カ所でコンクリートが十分充てんされておらず、隙間ができていたほか、柱の骨格となる鉄筋も変形していた。
 原因は穴を掘ったあとに地盤が変形し、コンクリートがいびつに固まったため隙間ができたこと、別の作業の過程で重機がぶつかり、鉄筋が変形したと見ているという。
 しかし詳しい原因や安全性への影響は会見でも明確にせず、今後調査を行い、同様の構造で作られている北側の柱についても調査するという。
 原電では工法を変更する可能性もあるとして、16日に原子力規制庁に不備を報告しており、工事計画に影響がないかも調べている。(以上はNHKニュースなど)

 また、「しんぶん赤旗」の2023年10月17日記事では、以下の記載がある。
 「会見で江尻氏は、共産党と本紙に寄せられた同原発構内で作業していた工事関係者の証言として、取水口部分の防潮堤の基礎となる『地中連続壁』でコンクリートが正しく打設されていない。基礎の鉄筋が正しい形状で組まれていない。基礎が岩盤に到達していない。基礎をつくる上での『安定液』の比重が正しく保たれていなかった、などの問題を指摘。『これまで工事が順調であるかのように説明していたが現実は違う。住民や自治体に対しても不誠実と言わざるを得ない』と指摘し、原電に説明を求めました。」

 4.内部告発で明らかになった問題は2つ

 一つ目は原電も認めた南側の柱のコンクリート充填不足と鉄筋の変形だ。
 しかしもう一つの点については明らかにしなかった。
 それは、北側の柱で起きているとされる、柱を建設中に地盤内部にあった障害物か何かに干渉したことで、鉄筋が深さ60m岩盤の位置まで達せず、中途半端なところで地盤の中に浮いているというもの。これは強度や安定性に極めて大きな影響を与える。
 原電はこれについては調査中として明確にしていない。
 事件は、内部告発で発覚した。
 掘削しなければこのまま完工していた可能性があり、その場合、設計通りの強度がない防潮堤が出来ていたことになる。
 では他の場所の工事はどうなのか、全部調査しなければならないはずだ。
 原電によると、防潮堤は全長1.7kmで、津波対策として2024年9月完成予定、くいを打ち込めない取水口部分約80.6mを、地下50mの鉄筋コンクリート造りの柱で支える構造になっている。
 原電の工事計画が明らかになる前の段階で、既に地元では軟弱地盤故の工事の困難さが指摘されていた。それが現実のものとなった。
 柱は津波の衝撃も支えなければならないが、地盤の中で浮いていたり鉄筋が変形しコンクリート材も不足していたら、たちまち破壊されてしまうだろう。
 何が起きているのか、原電は直ちに解明しなければならないし、このような事件が起きる原発の再稼働については認めるわけにはいかない。
 ※初出:2023.12.22発行「たんぽぽ舎金曜ビラ」
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