[2023_12_18_02]デブリ搬出 大きな壁 第1原発2号機 廃炉作業 ロボットアーム使用不可の恐れ(福島民報2023年12月18日)
 
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デブリ搬出 大きな壁 第1原発2号機 廃炉作業 ロボットアーム使用不可の恐れ

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 東京電力は福島第1原発廃炉作業の最難関とされる溶融核燃料(デブリ)の取り出しで大きな壁に突き当たっている。2号機の原子炉格納容器で取り出し置の挿入口となる貫通部に多量の堆積物があり、専用に開発したロボットアームが使用できない可能性装があるためだ。堆積物が想定以上に固着していることも予想され、他の方法も検討している。専門家はカメラで内部を調べられるロボットアームは取り出しの鍵を握る装置で、手始めとなる2号機で使えるかが今後の作業を左右すると指摘する。

 ◆「めど立たず」

 「デブリ取り出しのめどが立っていない。炉内の状況も分かっていない」。内堀雅雄知事は17日、就任後初めて来県した斎藤健経済産業相に苦言を呈した。
 東電によると、1〜3号機に残るデブリの総量は約880トン。今年度、数グラムを2号機から取り出す計画だ。貫通部は直径約60センチ、長さ約2メートル。10月中旬にふたを全開にしたところ、堆積物に覆われていた。ふたを開ける作業は当初4月下旬から約1カ月で完了する予定だったが、ボルトが固着しており、6月中旬から約4カ月かかった。堆積物は事故時の高熱でビニール製ケーブルなどが溶けて固まったとみられる。

 ◆堆積物除去できるか

 ロボットアームは国際廃炉研究開発機構(IRID)が英国の企業と共同開発した。最長約22メートルに伸びる。搭載したカメラやセンサーで格納容器の内部の状況も確認できる。高坂潔県原子力対策監は「原子炉圧力容器を支える土台『ペデスタル』や構造物、放射性物質濃度など格納容器内の状況を知る上でも大きな意味を持つ」と強調する。
 ロボットアームを使うには貫通部の堆積物を除去する必要がある。東電は来年1月初旬に高圧の水で格納容器内に押し込む作業を始める予定だが、「堆積物の取り残しが多いと使用できなくなる」(木野正登経産省資源エネルギー庁廃炉・汚染水・処理水対策官)という。

 ◆取り出し延期の可能性

 ロボットアームが使えない場合、アームより細い伸縮式パイプの使用を検討しているが、専門家からは「調査範囲は限定的」との見方が出ている。実際に使うには原子力規制委員会の認可を得る必要があり、今年度内に予定していた取り出し開始時期が遅れる可能性がある。
 東電は装置開発の遅れなどで、これまで2度延期した。現在の計画では2025(令和7)年度以降にデブリの本格的な取り出しを始める。2号機から取り出した数グラムのデブリを分析し、今後の取り出し方法の検討材料にする予定だ。高坂対策監は「詳細を調べられるロボットアームを簡単に諦めてほしくない」と求めた。
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