[2023_12_16_04]後発地震注意情報 運用開始1年 約7割が“聞いたことない”回答 (NHK2023年12月16日)
 
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後発地震注意情報 運用開始1年 約7割が“聞いたことない”回答

 18時55分
 北海道から岩手県にかけての沖合の海溝で大地震が起きた際にその後の巨大地震への注意を呼びかける「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の運用が始まってから1年がたちました。NHKが対象地域に住む1000人にアンケートを行ったところ、7割近くが「聞いたことがない」と回答するなど、情報の普及や理解が進んでいないことがわかりました。
 「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、北海道から岩手県にかけての沖合にある「千島海溝」と「日本海溝」、それにその周辺でマグニチュード7クラスの地震が起きた場合にその後の巨大地震の発生に注意を呼びかける情報で、去年、運用が始まりました。
 16日で1年になるのを前にNHKは防災対応が求められる北海道と青森県、岩手県、宮城県、福島県、茨城県、千葉県の対象地域に住む1000人に、11月インターネットでアンケートを行いました。
 その結果、「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の名称について、69%が「聞いたことがない」と答え、多くの人に知られていないことがわかりました。
 一方、「聞いたことがある」と回答した31%の人たちの間でも理解が十分進んでいません。
 「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が出た場合、巨大地震が起きる確率は1%程度で、気象庁は、高い精度で予測したり発生を予知したりする情報ではないと強調していますが、ほぼ半数(49%)が発生確率を「50%程度」と回答したほか「ほぼ100%」と答えた人も3割(30%)でした。
 また、情報が出た場合にどのように行動したらいいかについて「知らない」と答えた人は46%にのぼりました。
 1000人に行ったアンケートでは、この情報が発表されたらどのような行動を取るかについても複数回答で聞きました。
 その結果、最も多かったのが「家族との連絡手段を確認する」と、「非常持ち出し品を常に手元に置く」でそれぞれ46%だった一方、この情報で求められていない「指定された避難所への事前避難」を選んだ人も43%に達しました。
 さらに、「何もしないと思う」と答えた人も15%にのぼりました。
 このほか、8割余り(83%)が「国や自治体による周知が進んでいない」と答えていて、巨大地震や津波への備えに多くの課題が残っている実態が明らかになりました。

 「北海道・三陸沖後発地震注意情報」とは

 「北海道・三陸沖後発地震注意情報」は、北海道から岩手県にかけての沖合の海溝で起きる巨大地震に備え、注意を呼びかける情報です。
 北海道沖の「千島海溝」と三陸沖の「日本海溝」では、過去にマグニチュード7から9クラスの地震が繰り返し起きていて、最大クラスの巨大地震の発生が切迫していると考えられています。
 最大クラスの巨大地震が起きると国の想定では北日本の太平洋側を中心に巨大な津波が押し寄せ、死者は最悪の場合、10万人から20万人近くに達するとしています。
 過去の巨大地震の前には、より規模の小さな大地震が起きたこともあり、東日本大震災をもたらした2011年の巨大地震では2日前にマグニチュード7.3の地震が起きていました。
 このため、気象庁は想定される震源域やその周辺でマグニチュード7クラスの地震が発生した場合に、おおむね2時間後をめどに後発地震注意情報を発表し、その後の巨大地震の発生がふだんよりも高まっていると注意を呼びかけます。
 対象は、3メートル以上の津波や震度6弱以上の揺れなどが想定されている北海道と青森県、岩手県、宮城県、福島県それに茨城県と千葉県の、太平洋側を中心とした182の市町村です。
 事前の避難などは呼びかけず、発表から1週間程度は日常の生活を維持しつつ、すぐに避難できるよう備えておくことなどを求めています。
 また、企業や地域に対しては津波や土砂災害のおそれのある場所での作業を控えるほか、地域に住む高齢者への声かけや連絡手段を改めて確認するなどとしています。
 防災対策が行われれば、国は死者を8割は減らせるとしています。
 この情報が発表される頻度は、2年に1回程度と見込まれていますが、巨大地震が起きる確率は100回に1度程度と低いうえ、防災対応を呼びかける1週間が経過したあとに大規模な地震が起きる可能性もあるなど不確実性が高いとしています。

 専門家「知っている人が思ったより少ない」

 災害情報が専門でアンケートを監修した東北大学の佐藤翔輔准教授は「運用開始から1年がたち、これまで国や自治体がさまざまな場面で広報してきたと思うが、情報を知っていた人が思っていたよりも少ないという印象だ」と述べました。
 「北海道・三陸沖後発地震注意情報」が浸透していない理由については、千島海溝と日本海溝で想定される巨大地震が知られていないことや運用が始まってから1度も情報が発表されていないことなどが考えられるとしています。
 そのうえで「情報の内容をよくわかっていない人が多い中で、実際に情報が出されたらパニックになり、各方面に影響が出るのではないか」と述べ、懸念を示しました。
 一方で、情報が浸透すれば大きな効果が期待できるとして、「国や自治体は情報名だけでなくなぜこういう情報が必要なのかや、情報が出された際に自治体は何ができて何ができないのか、そして住民がとるべき行動は何なのかをセットで学べる機会を設けて浸透を進めていく必要がある」と指摘しています。

 アンケート結果 気象庁「重く受け止める」

 アンケートで7割近くが「北海道・三陸沖後発地震注意情報」の名称を「聞いたことがない」と回答したことについて、気象庁地震津波防災推進室の海老田綾貴室長は、「この数字を重く受け止めている」と述べました。
 また、この情報の浸透の難しさについて、必ず後発の巨大地震が起きるわけではなく不確実性が高いことや、情報が出たときの防災対応がわかりにくいことなどを挙げました。
 一方で、東日本大震災の2日前にマグニチュード7クラスの地震が起きた事実もあるとして、後発の巨大地震に注意を呼びかけるこの情報の意義を強調したうえで「今まで以上に関係省庁と連携して普及・啓発をさらに進めたい、このひと言に尽きると思う。1人でも多くの人にこの情報の名称と内容を知ってもらうために努力していきたい」と話していました。
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