[2023_10_14_04]核ゴミの行方は依然不透明 寿都町と神恵内村の「文献調査」は大詰め (読売新聞2023年10月14日)
 
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核ゴミの行方は依然不透明 寿都町と神恵内村の「文献調査」は大詰め

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 高レベル放射性廃棄物(核のゴミ)の最終処分場を巡り、選定の第1段階となる「文献調査」が、寿都町と神恵内村で大詰めを迎えている。両首長は今後、住民投票などで第2段階の「概要調査」に進むかどうか判断する方針だが、必要な知事の同意が得られる見通しは立っていない。「3番目の候補」とみられた長崎県対馬市は調査受け入れを拒否し、核のゴミの行方は依然として不透明だ。(宮下悠樹、片岡正人)

 ■理解まだまだ

 9月26日、神恵内村漁村センターでは、最終処分場事業を担う原子力発電環境整備機構(NUMO)と住民代表らとの16回目の「対話の場」が開かれた。この日はNUMOの技術者が、自ら携わったスイスなど海外の最終処分場選定について説明した。
 参加していた商店経営の男性(41)は「地層処分の仕組みが少しずつわかってきた。まちづくりに関しても活発に議論できているのはよいこと」と振り返った。
 NUMOは2020年11月、両町村で文献調査を始め、これまで地質や火山活動などの文献・データ862点を収集した。目安としていた2年間の調査期間を1年近く過ぎ、現在、調査報告書をまとめる段階に入っている。
 「対話の場」は、事業を住民に理解してもらい、住民からの意見や要望を反映させるのが狙いだ。高橋昌幸村長は「関心を持つ人は増えたと思う」と語る。
 ただ、参加するのは、調査に前向きな住民が中心で、地域全体を巻き込んだ議論にはなっていないのが現状だ。寿都町でも対話の場は17回を数えるが、片岡春雄町長は「(理解は)まだまだ広がっていない。内容が専門的で、特に高齢者には難しい」との認識を示す。

 ■議論は道内のみ

 概要調査は、実際に掘削して地質や地下水の状態を調べる。実施には地元首長のほか、知事の同意も必要だ。道は00年に核のゴミを「受け入れ難い」とする条例を制定。鈴木知事も同様の姿勢を貫き、13日の定例記者会見でも「概要調査に反対する考えは変わらない」と強調した。現状では、最終処分場選定に向けた調査は第1段階で終わる可能性がある。
 長崎県対馬市では今春、文献調査受け入れに向けた検討が始まったが、9月に 比田勝尚喜市長が受け入れ拒否を表明し、終結した。全国に広がるかどうかが注目された核のゴミの議論の舞台は、引き続き北海道のみとなった。

 ■「町議選影響ない」

 片岡町長は概要調査に進むかどうかを問う住民投票について、新たに受け入れ表明する自治体が現れるまで実施しない考えを示している。対馬市の受け入れ拒否で「こちらの動きも止まってしまった」と漏らす。
 3日に投開票された町議選(定数9)では、条件付きを含め調査に賛成する5人が当選した。議会の過半数を占めることになったが、片岡町長は「住民投票の結果をもとに判断するので、町議選は議論に影響しない」と受け止めている。
 高橋村長は「本当は10か所くらい候補地が出てきてほしい」と議論の全国的な広がりを望む。そして、こう訴えた。「電気を使う以上、国民全体に自分事として考えてほしい」

 鈴木達治郎・長崎大教授(原子力政策)の話 「調査を受け入れて住民を説得する首長の負担が重すぎて、候補地が現れない状況が続いている。国が責任を持って科学的に適した候補地を挙げ、地元が応じる形式に変えることを検討する時期ではないか」

 ◆3段階建設決定まで20年

 核のゴミの最終処分場選定に向けた調査は「文献調査」「概要調査」「精密調査」の3段階があり、全工程は約20年に及ぶ。
 文献調査を受け入れた自治体には最大20億円が交付される。両町村には交付済みで、寿都町は主に保育士や保健師の人件費に充て、神恵内村は漁港の荷さばき場の整備費に活用。残高は2023年度末で、寿都町が9億3100万円、神恵内村は4億990万円の見込みで、両町村とも基金として積み立てている。
 第2段階の概要調査に進んだ場合、自治体には最大70億円が交付される。
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