[2023_06_21_08][インタビュー]立憲民主党の阿部知子衆議院議員 「海は共有財産…周辺国の理解が必要」(ハンギョレ新聞2023年6月21日)
 
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[インタビュー]立憲民主党の阿部知子衆議院議員 「海は共有財産…周辺国の理解が必要」

 7:44配信
 「東京電力の言うように多核種除去設備(ALPS)で汚染水を何度もろ過して放射性物質を最大限除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げた後、セメントや砂などを混ぜて固体で保管すればよい。このコンクリートをのちに防潮堤などに再利用できる」
 立憲民主党の阿部知子衆議院議員(74)は、目前に迫った福島第一原発の汚染水の海洋放出について、「海は共有財産」だと述べつつ、汚染水を固体にして日本国内に置き、後に再利用しようという新たな代案を提示した。
 また「日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時、環境や人体に与える影響についても深く研究していない。放射性物質を海に捨ててはならない」と訴えた。
 日本の超党派議員の集まり「原発ゼロ・再エネ100の会」で活動しつつ、汚染水放出の問題点を粘り強く訴えている阿部議員のインタビューは、15日に東京都千代田区の衆議院議員会館で行われた。韓国は「汚染水」、日本は「ALPS処理水」と呼んでいることについて阿部議員は、ALPSで処理しても依然として汚染水だと述べつつ、「ALPS処理汚染水」という用語を使っていると語った。

−日本政府は、今月中にIAEAから最終報告書が発表されれば、これを根拠として福島第一原発の汚染水を今年の夏ごろ海に放出する予定だ。
 「日本政府が決定し、日本の原子力委員会、IAEAが大丈夫だと言ったからといって済む問題ではない。海は共有財産であり、広くつながっている。海洋放出を強く憂慮する人々と周辺諸国の理解がなければならない。そもそも『ロンドン条約』や議定書では、海に放射性物質を投棄してはならないと定められている。IAEAの一般安全指針(GSG-8)には、『その行動によって個人と社会に予想される利益は、その行動による害悪よりも大きくなければならない』という原則がある。汚染水の放出が100%安全とは言えない中、日本だけでなく韓国の漁民、太平洋の島しょ国などが強く反対している。利益はなく危険が存在するのなら、海洋放出はしてはならない。IAEAはこの部分をまったく検討していない」

−日本政府は、ALPSで放射性物質を基準値以下に下げ、除去できないトリチウム(三重水素)は海水で希釈して放出すれば安全だと主張している。
 「福島第一原発は(2011年3月に)事故が起きた原子炉であるため、セシウムやストロンチウムなどのあらゆる放射性物質が汚染水には含まれている。経済産業省と東京電力は、どれだけの量の放射性物質を海に捨てることになるのかは語らない。希釈だけに焦点を当てており、放射性物質の総量に対しては何の検証もない。基準値以下にして薄めたとしても巨大な量の処理汚染水であるため、放射性物質の総量は無視できない。処理汚染水の放射性物質測定核種も64種から30種に縮小された。リスクを評価するためには、できうる限り確認しなければならない。日本政府とIAEAは、処理汚染水の海洋放出が長期間続いた時の環境や人体への影響についても深く研究していない。また日本は福島第一原発の2051年の廃炉を目指しているが、これは不可能だ。廃炉になるまで汚染水は発生し続ける」

−汚染水の安全性にかかわるALPSの性能も争点だ。
 「ALPSの性能を確認するための資料は不十分。汚染水が保管されている1千基を超えるタンクのうち、試料を採取して64の核種を分析したのはごく一部だ。K4、J1-C、J1-Gの3つのタンク群に対してのみだ。さらに大きな問題は、(東京電力に確認したところ)これらの試料採取の過程で攪拌(かくはん)作業も行われていないこと。相対的に放射性物質の濃度が低いタンクの上部から試料を採取したということだ。ALPSの性能を確認するための資料は信頼できないということになる。これはごまかし行為だ。東京電力は、処理汚染水の海洋放出前の核種測定の際に攪拌するため問題はないという立場だ」
(※先月23〜24日に福島第一原発を訪問した韓国視察団は、ALPSの注入口と出口における64の核種の濃度を分析した2019年から昨年までの原資料を確保したことを成果として掲げたが、この資料の実効性に疑問が提起されたことになる)

−汚染水はどのように処理すべきだと思うか。
 「放射性物質は、環境や人間を保護するためには閉じ込めておかなければならない。これが原則だ。まだ間に合う。東京電力の言うように、ALPSで汚染水を何度もろ過して放射性物質をできる限り除去することが必要だ。汚染水の放射性物質を基準値以下に下げ、その後、セメントや砂などを混ぜて固体として保管する『モルタル固化』という方法で保管すればよい。専門家は、このコンクリートは後に防潮堤などとして再利用できるという。汚染水のように福島第一原発に保管し続ける必要もない。汚染水処理は、政治的論争より環境を守るために皆で知恵を集めなければならない問題だ」

−最近の世論調査によると、日本国民の60%が汚染水放出に賛成している。日本の雰囲気はどうか。
 「福島第一原発の周辺は暖流と寒流が出会う非常に良い漁場だ。海を守りたいと思っている漁民は強く反対している。世論は60%が賛成というが、国民には正しい情報が与えられていない中、日本は全体的に原発についての雰囲気が変わりつつある。(原発の運転期間が60年以上に伸びるなど)東日本大震災の前に戻っている感じがする。原発事故が過小評価され、あの日の教訓を忘れさせている。汚染水の放出問題も、トリチウムは一般の原発からも出ており、十分希釈すればよいと原子力規制委員会も考えているが、汚染水の実態はそうではない。海の環境を国際的にどのように守っていくかに対する認識がない。これはただのトリチウムではなく、事故を起こした原発から出る汚染水だという考えが足りない。原発事故から12年がたったが、セシウムなどの放射性物質に汚染された魚が今もとれる。果てしなく生物濃縮が起こっている。海は広くて薄まるからといって、放射性物質の海洋投棄をしてはならない。もっと公開的で民主的なやり方で汚染水の問題を議論していきたい」

東京/キム・ソヨン特派員 (お問い合わせ japan@hani.co.kr )
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