[2023_08_28_09]反日利用か、PV稼ぎか…中国からの電話に自治体「非常に迷惑」(東京新聞2023年8月28日)
 
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反日利用か、PV稼ぎか…中国からの電話に自治体「非常に迷惑」

 2023年8月28日 21時36分
 東京電力福島第1原発の汚染水を浄化処理した水の海洋放出後に中国からとみられる嫌がらせの電話や苦情が寄せられている問題で、関東地方の自治体などにも同様の電話が相次いでいる。東電には6000件を超えた。専門家は、中国経済が悪化しているため「国内の不満をそらすために中国政府が利用しているのでは」と分析する。

 ◆千代田区には1000件超、区民サービスに支障

 東京都千代田区では25〜28日、国際電話の中国の国番号「86」から始まる電話が区代表電話のコールセンターや夜間窓口に1000件超に上った。区によると、罵声や無言電話のほか、「汚染水を流すな」という中国語や片言の日本語で録音されたメッセージなどが確認された。区担当者は「区民へのサービスに支障をきたし、非常に迷惑なのでやめてほしい」と話す。28日、警視庁麹町署に情報提供し対応を検討している。
 このほか、江戸川区総合文化センターに中国の国番号からの着信が相次いだほか、神奈川県警本部の代表電話にも24〜25日に約40件あった。多くは10〜20秒程度で、中国語のような言葉で一方的に話すか、無言だった。
 水戸市役所には放出が始まった24日以降、10件ほどかかってきた。市の担当者は「内容は理解できず、黙っているとやがて切れた。国番号の『86』が表示されたので、中国からの電話と判断した」。茨城県内では、福島県境の北茨城市役所でも電話があった。

 ◆政府系メディアがあおり、政府は黙認

 中国国内では、処理水の苦情を入れるため、地図アプリを基に日本の公的機関などに電話をかけている様子を撮影した動画が投稿サイトにあふれている。

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 中国人男性が日本の国会議事堂に電話し、「なぜ核汚染水を海に捨てるのか」と質す様子の動画=中国の動画投稿アプリ「抖音(ドウイン)」より

 東京大大学院総合文化研究科の阿古智子教授(社会学)は「政府系メディアが日本の処理水の安全性に問題があると報じ続け、あおられた市民が反応している。交流サイト(SNS)でビューやクリック数を稼ごうと、面白おかしく動画発信する若者らも少なくない」と指摘する。
 不動産価格が暴落するなど中国経済は深刻な状況にあり、経済政策に対する市民の不満が高まっているとし、「中国政府はSNSの発信などを黙認しており、国内の不満から目を背けさせるために『反日』を利用しているのではないか」との見方を示した。(竹島勇、奥村圭吾、米田怜央)

 ◆東京電力には計6000件

 東京電力は28日の記者会見で、中国からの抗議とみられる電話が東電全体で6000件以上かかってきていることを明らかにした。
 東電によると、24日から27日の間に国番号「86」からかかってきた電話の件数を集計。本店や福島第1原発などの内訳は明らかにしていない。内容についても「模倣される恐れがある」(広報担当者)として明かさなかった。業務に支障は出ていないという。(小野沢健太)
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