[2023_08_25_02]処理水放出の日、中国のマグロ解体ショーで聞こえた「本音」は…海外でも高い関心 韓国は議論激化(東京新聞2023年8月25日)
 
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処理水放出の日、中国のマグロ解体ショーで聞こえた「本音」は…海外でも高い関心 韓国は議論激化

 2023年8月25日 06時00分
 福島第1原発の処理水放出開始は、海外でも関心を集めている。中国政府の強い反発は、日本の水産物輸出への影響が必至だ。韓国では政府が理解を示す一方、市民や野党には根強い反対が残る。(上海・白山泉、ソウル・木下大資、バンコク・藤川大樹)

 ◆日本産マグロをアピールするはずが…

 処理水放出が始まった24日、上海では国際漁業博覧会が開かれていた。中国の輸入業者によるマグロ解体ショーには人だかりができたが、使われたのはオーストラリア産のマグロ。中国政府が日本産水産物の全面禁輸を発表した直後にもかかわらず、責任者は「代替品を確保している。問題ない」と余裕を見せた。
 しかし別の本音もある。オーストラリア産の価格は日本産の6割程度だが、この責任者は「日本産のほうが大トロが多く、脂が乗っておいしい。一部顧客から注文はあるが、手に入らない」と明かした。漁業博は従来、この業者にとって日本産マグロをアピールする場だったという。
 漁業博には20以上の国・地域から4000社が参加。日本企業の出展は数社にとどまる。水産加工品会社の幹部は「しばらく様子見だ。通関できないなら中国の現地生産を増やすしかない」と言葉少なだった。

 ◆韓国政府は「容認」だが…

 一方、在中国日本大使館はホームページで在留邦人に注意喚起した。放出に反発する中国人とのトラブルを想定する。香港メディアによると、香港の日本総領事館前では24日、約30人が抗議活動を行った。
 韓国の韓悳洙首相は24日、国民向けの談話を発表し「過度に心配する必要はないというのが全世界の専門家の共通した意見だ」と世論の沈静化に努めた。
 尹錫悦政権は、放出計画は科学的・技術的に問題ないとして事実上容認する立場。韓氏は、専門家を2週間に1度、福島の国際原子力機関(IAEA)事務所に派遣して処理水のモニタリングに参加すると説明。一方、福島県などの水産物の輸入規制は維持する。

 ◆ソウルで激しい抗議 フィリピンは「注視」

 野党や市民団体は同日、各地で抗議集会を開いた。最大野党「共に民主党」の李在明代表は「核汚染水の放出は『第2の太平洋戦争』として記録されるだろう」などと日本批判のトーンを強め、尹政権を「環境災害のもう一方の主犯だ」と攻撃した。ソウルの日本大使館前でも抗議活動があり、若者らが大使館の入るビル内に一時乱入した。
 南西部の全羅南道や南部の済州道は水産物の放射性物質検査強化を打ち出し、自治体レベルの対策も相次ぐ。政府は「科学に基づかない虚偽扇動が国内の水産業を脅かす」と反論、韓国内の議論が激化している。
 フィリピン外務省は24日の声明で「科学と事実に基づく観点から、この地域の海域への影響を引き続き見守っていく」と注視を続ける姿勢を示した。「海洋環境の保護と保全が最優先事項」とも強調した。
 米政府は一貫して放出を支持する。ブリンケン国務長官は15日、「日本は透明性ある手続きを踏んだ」と評価した。
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