[2023_08_23_05]処理水放出 中国向けホタテ輸出停滞で「先見えず」 青森県内水産業者(東奥日報2023年8月23日)
 
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処理水放出 中国向けホタテ輸出停滞で「先見えず」 青森県内水産業者

 2023年08月23日 11時03分
 政府が東京電力福島第1原発の処理水海洋放出を決定する中、ホタテなど県産海産物を中国に輸出している青森県の水産業者にも影響が広がっている。中国向けの輸出が止まり、業者は国内市場の値崩れが進むことを懸念。影響の長期化を心配する声も上がる。
 ジェトロ青森によると、2021年に輸出された県産ホタテは1767トン、11億5277万円。このうち中国向けは919トン、3億6237万円だった。海洋放出に反対する中国は、日本から輸入する水産物に対し、7月上旬から全面的な放射性物質検査を行っている。
 青森市のホタテ養殖・加工業「山神」の担当者は「政府が8月下旬にも処理水を放出する-との報道が流れた途端、輸出向けの引き合いがぴたっと止まった」と話す。
 同社では県産ホタテを冷凍貝柱やボイル、フライ用などに加工し、アジア各国や米国、欧州に輸出している。輸出がストップした中国向けは市内の倉庫に詰まれた状態といい、「どれだけ影響が続くか全く見えない」と懸念を強める。
 30年以上にわたりホタテを輸出している別の県内業者も「これほど先の見えない状況は初めて」という。業者は、輸出できない北海道産などのホタテが国内に出回り、価格が下がることを懸念。今後、規制が緩和されても「いったん汚染水のレッテルが貼られたら、中国市場のニーズが戻るとは思えない」と先行きを不安視する。
 ジェトロ青森によると、県産ホタテを出荷する業者が最近、輸出先の香港側から値下げを要求されたと相談してきたという。糸長真知所長は「中国の対応に便乗し、処理水を値下げの道具にしている」と指摘。「政府が放出に踏み切れば、影響はさらに広がるだろう」とみる。
 新たな輸出先開拓を模索する動きもある。野辺地町のホタテ加工業「マルイチ横浜」の横M充俊社長は、政府の放出方針に「実際に行われれば影響は計り知れない」と反対の立場を示す一方、「企業としては知恵の出しどころ。今まで中国がメインだった輸出先を分散させるいい機会であり、国内や東南アジア、米国で販路をさらに広げるチャンスと捉えている」と前向きに語った。
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