[2023_08_09_02]「ALPS処理水」の海洋放出は許されない 「大型タンクによる陸上での保管」など他の方法を検討するべき(日本科学者会議原子力問題研究委員会2023年8月9日)
 
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「ALPS処理水」の海洋放出は許されない 「大型タンクによる陸上での保管」など他の方法を検討するべき

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 私たちは、東京電力福島第1原子力発電所の事故(2011年)やスリーマイル島事故(1976年)やチェルノブイリ事故(1986年)などの重大事故について、人為ミスや自然災害に起因する事故の原因を科学的に究明し、事故防止の教訓を明らかにしてきました。
 同時に、国と電力会社の原発推進策の誤りを批判し、責任を追及してきました。

 しかし、国は、1953年の国連におけるアイゼンハワー・元米大統領の原子力平和利用の演説を受けて、「原発安全神話」を形成しながら、科学者や住民の声を聞くことや、科学的な説明もしないまま、国策の名で原発推進の道を暴走してきました。

 ここで原発安全神話とは、5重の壁という「多重防護」やIAEA(国際原子力機関)による「深層防護」を指しますが、それらは、「万が一にも起きない」とされていた重大事故が米国・ソ連・日本で起きた現実によって、完全に崩壊したはずでした。
 すなわち、重大事故により放射性物質が環境に放出され、生命体は被ばくし、直接・間接に死傷しました。
 原発の危険性は、原子爆弾と同様に、放射線に起因することが明らかになったはずです。

 福島原発事故の後、ドイツは脱原発の道を選びました。日本も原発縮小の方針を固めました。
 しかし、あろうことか、岸田文雄政権は、原発安全神話をさらに強化し、福島原発事故の教訓を踏まえず、今年(2023年)5月にGX推進法を成立させ、原発回帰へと進みました。

 そして、今、「ALPS処理水」(政権による造語:ALPS処理された放射性汚染水)を海洋へ放出しようとしています。
 IAEAは、決して科学的な第3者検査機関でも、責任を持つ機関でもありません。IAEAのレビュー報告に呼応して海洋放出を進めるのは大間違いです。

 政府は、ALPS処理水による生命体への放射線影響がないことを科学的に証明しないまま、安全だとしています。
 また、ALPS処理水を海水で希釈するので、放射能濃度は十分低いから安全だというが、それは汚染物質の総量規制原則に反しています。
 政府が「海洋放出」と言い、「海洋投棄」と言わないことも疑問です。
 汚染物質の「海洋投棄」は、ロンドン条約に違反します。

 安倍晋三・元首相や岸田文雄首相らの言葉には、「嘘・隠蔽・捏造」による新造語が多く、信頼を置けません。
 「ALPS処理水」の海洋放出は許されません。
 「海洋放出」に代わる「大型タンクによる陸上での保管」などの科学的な他の方法を検討するべきであると、強く主張します。
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