[2023_08_04_04]<ふくしま作業員日誌・53歳男性>厳しい暑さ「体重ぐっと落ちた」 福島第1原発(東京新聞2023年8月4日)
 
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<ふくしま作業員日誌・53歳男性>厳しい暑さ「体重ぐっと落ちた」 福島第1原発

 今年の夏の暑さはヤバイ。昨年も異常だと思ったけど、毎年暑さが更新される感じ。夜寝るときもエアコンはつけっぱなし。サマータイムで明け方から作業をするが、外に出た途端、むわっと暑さがきて「ああ今日はもう駄目だ」と思う。湿度も厳しいし、朝9時には30度を超えていたりする。毎日続けばそのうち慣れると思ったけど、この暑さではそうもいかない。
 装備を着けた途端に汗が噴き出し、全面マスクを着けると滴る大量の汗で前が見えなくなる。作業が始まると発汗は最高潮に。きのう飲んだ酒が一気に出る。構内の地面や斜面は、雨が土壌に染み込み、汚染水に流れ込む地下水を増やさないように、アスファルトや鉄板で覆われている。敷地に林立するタンクの照り返しで、体が溶けそうになる。炎天下での作業中、何が何だかわからなくなる。
 汚染が低い場所では、ファン付き作業服を使えて少しはましみたいだけど、防護服を着るような場所では使うわけにはいかない。現場では水も飲めない。なるべく短い時間で作業を終わらせるが、しばらく口が利けないぐらいぐったりする。最後に線量計を返し、駐車場まで外を歩く場所では、太陽が疲れた体に刺さる。体重はぐっと落ちた後は上下するくらいだが、毎日こたえる。幸い若手が元気で休まず来てくれている。
 夏ごろに開始すると言っていた海洋放出は、まだ始まらない。原発で働く身としては理解してもらうしかないと思う。国も東電もウソついたり隠したりせず、きちんと公表してほしい。そうしないから信頼が揺らぐ。信用されないのは、現場で働く俺たちも悔しい。
 現場には今「海洋放出があるから問題を起こすな」という指令が飛んでいる。これは五輪や国際会議があるときも同じ。それが過ぎれば静かになる。あと少しでお盆休みだが、仕事が山積み。残暑も厳しいというし、休み明けもきついな。(聞き手・片山夏子)
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