[2023_07_14_01]<ふくしま作業員日誌・52歳男性>原発処理水の海洋放出に複雑な思い 福島第一原発(東京新聞2023年7月14日)
 
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<ふくしま作業員日誌・52歳男性>原発処理水の海洋放出に複雑な思い 福島第一原発

 サマータイムだから作業は早朝から始まり、昼前には終わる。それにしても今年の夏はきつい。うちの班ではまだ熱中症は出てないが、ぎりぎりの状態。原発のある浜通りは比較的気温が低いけど、33度の日もあったな。防護服や全面マスク、かっぱを着る日は、体感温度は40度ぐらいまで上がる。装備を着けた瞬間から汗だくになる。さらに気温や湿度が上がったら、どうしようもない。
 イチエフ(福島第一原発)からの海洋放出が連日報道されている。原発事故後、汚染水を浄化処理してタンクにためたもの。敷地内には1000基のタンクがあり、敷地はタンクであふれている。ある意味よく12年間ためたと思う。だけど、このままでは行き詰まる。原発で働く俺からすると、海洋放出せざるを得ないと思うし、放出する水的にも問題ないと思うけど…。
 でも、浜で育った俺らには漁師仲間がいっから複雑。福島の漁業は試験操業が終わり、ようやく本格操業が見えてきたところ。漁獲高は事故前の2割と戻りきってはいないが、浜には活気が戻った。事故前のように漁師仲間から魚をもらったりして、食卓には毎日のように地元の魚が並ぶ。
 浜焼きも売り始めた。地元で揚がった魚やエビ、イカだったりを串に刺して、炭火で焼いて食べる。これがうまい。事故直後は海にいつも出ていた漁船や舟の姿がなくて、港に活気がなくて寂しかったから、活気が戻ったのはうれしい。
 一昨年2月、昨年3月と2度にわたって福島を襲った最大震度6強の地震で、大きな被害を受けて休業していた福島県相馬市などの旅館やホテルが修復し、この春からようやく営業を再開し始めている。やっと建て替え工事が始まったホテルもある。原発作業はしなくてはならないから、海洋放出はしてほしい。でも、再開したホテルや活気が戻った漁業に、海洋放出の影響がどう出っか。それが心配。(聞き手・片山夏子)
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