[2023_07_08_01]米 “ウクライナにクラスター爆弾供与” 人権団体などから批判 (NHK2023年7月8日)
 
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米 “ウクライナにクラスター爆弾供与” 人権団体などから批判

 アメリカ政府は、ロシア側への反転攻勢を続けるウクライナを支援するため、殺傷能力が高いクラスター爆弾を供与すると発表しました。クラスター爆弾は使用などを禁止する国際条約がある兵器で、人権団体などからは批判の声も上がっています。
 アメリカのバイデン政権は7日、ロシア側への反転攻勢を続けるウクライナからの要請に応じてクラスター爆弾を新たに供与すると発表しました。
 クラスター爆弾は、1つの爆弾から多数の小型爆弾が飛び散る殺傷能力の高い兵器で、一部が不発弾として残って民間人に被害を及ぼすおそれがあるとして、使用などを禁止する国際条約があり、日本を含む100か国以上が加盟する一方、アメリカやロシア、ウクライナなどは加わっていません。
 バイデン大統領はCNNテレビのインタビューに対し「難しい決断だった」と述べ、アメリカでウクライナに供与する砲弾の製造が追いついていないことを念頭に、クラスター爆弾の供与は追加の砲弾を製造するまでの一時的なものだと説明しました。
 また、アメリカ国防総省はロシア軍がウクライナ国内で使っているクラスター爆弾は不発弾になる確率が30%から40%のものであるのに対し、アメリカが供与するのは確率がより低い、2.35%未満のものだとしています。
 さらに、ウクライナ政府が民間人への被害を抑えるために都市部では使わないことなどを確約したとしています。
 一方で、世界の人権団体などでつくる連合体「クラスター弾連合」は7日、声明を発表し「バイデン政権の決定はウクライナ市民に恐ろしい被害をもたらす」として、供与をやめるよう求めるなど、批判の声も上がっています。

 クラスター爆弾とは

 クラスター爆弾は戦闘機やロケット砲などで発射されたあと、空中で数十から数百の小型爆弾が放出される兵器です。
 アメリカメディアによりますと放出された小型爆弾は、サッカー場数個分の広い範囲に飛び散り、敵の部隊や装甲車両を攻撃するということです。アメリカ国防総省の高官は、ウクライナの反転攻勢に対してざんごうを掘るなどして守りを固めるロシア軍への攻撃に効果的なものだと説明しています。
 一方、クラスター爆弾は、広範囲にまき散らされた小型爆弾の一部が不発弾として残り、戦闘終了後も復興の妨げになるおそれが指摘されています。クラスター爆弾はベトナム戦争や湾岸戦争、それにイラク戦争などで使用され、戦争から数十年たったあとに子どもを含む民間人が被害にあうケースも報告されています。
 このため、クラスター爆弾の製造や使用を禁止する国際条約が2010年に発効し、日本を含む100か国以上が加盟していますが、アメリカやロシア、それにウクライナなどは加わっていません。

 米専門家「ウクライナの反転攻勢 計画通り進んでいない」

 アメリカのバイデン政権がクラスター爆弾の供与に踏み切った理由について、保守系のシンクタンク、ハドソン研究所のカサポル上席研究員はNHKのインタビューに対し「ウクライナの反転攻勢が計画通りに進んでいないからだ」と述べました。
 その上で「ざんごう戦や砲兵中心の作戦でロシア軍が何重にも防衛していることを考えると、クラスター爆弾があるかないかではウクライナ軍の姿はまったく異なる。供与はウクライナにとって有益な結果をもたらすのは間違いない」と述べ、クラスター爆弾の供与によって、ウクライナの反転攻勢に弾みがつくとの見方を示しました。
 一方、バイデン政権がこれまで、クラスター爆弾を供与してこなかったことについては「バイデン政権はロシアが反応すると考えていたからだ。クラスター爆弾を供与すればロシアを挑発すると考えていた」と述べました。
 その上で「ロシアは、およそ18か月にわたり、欧米諸国を戦術核で脅してきた。しかし、これまでのところ、いかなる戦術核の使用も見ていない。弱みを見せることがロシアを挑発するのであり、兵器の問題ではないことを理解すべきだ」と述べ、クラスター爆弾の供与は緊張の高まりにはつながらないとの考えを示しました。
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