[2023_07_05_05]IAEA事務局長「処理水放出終わるまでIAEAは福島にとどまる」(NHK2023年7月5日)
 
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IAEA事務局長「処理水放出終わるまでIAEAは福島にとどまる」

 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐって、福島県内の自治体などでつくる評議会にIAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長が出席し「処理水を安全に放出し終わるまでIAEAは福島にとどまる」と述べ、現地で監視を続けていく考えを示しました。
 5日、福島県いわき市で開かれた評議会には、地元の市町村長や漁協などの代表が出席し、東京電力の担当者からIAEAが4日処理水を薄めて海に放出する計画について「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表したことなどが説明されました。
 これについて出席者からは意見が相次ぎ、いわき市の内田広之市長は「安全と安心はイコールではない。安全ということが報告書で示されたわけだが、市民や漁業者などの理解醸成は途上でさらなる情報発信をお願いしたい」と述べました。

 グロッシ事務局長「最後の1滴放出までIAEAは福島に」

 このあと、IAEAのグロッシ事務局長が出席し、グロッシ氏は福島第一原発の構内にIAEAの職員が常駐する事務所を設置することを踏まえ「放出への懸念や疑問は一気に解決できないが、福島のこの地で皆さんと共存することを約束する。処理水の最後の1滴が安全に放出し終わるまでIAEAは福島にとどまる」と述べ、現地で監視を続けていく考えを示しました。

 福島県漁連 野崎哲会長「これからのことが大事」

 評議会に参加した福島県漁連の野崎哲会長は「国と東電の責任で行うことだが、これからのことが大事だと思う」とだけ述べて、足早に会場をあとにしました。

 グロッシ事務局長 処理水放出の設備など視察

 IAEA=国際原子力機関のグロッシ事務局長は5日午後、福島第一原発を訪れ、先月末に工事が完了した処理水を薄めて海に放出するための設備などを視察しました。
 東京電力福島第一原子力発電所にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について政府は基準を下回る濃度に薄め、夏ごろから海への放出を始める方針です。
 処理水を薄めて放出するための設備の工事は先月26日に完了していて、IAEAのグロッシ事務局長は5日、福島第一原発を訪れて、それらの設備を視察しました。
 このうち設備全体を見渡せる高台では、東京電力の小早川智明社長から、処理水と海水を混ぜて濃度を薄める配管や放出する前の処理水をためる巨大な水槽の仕組みなどの説明を受けていました。
 また、海に放出する処理水が生物の体内に蓄積されないないことを確認するために、東京電力がヒラメなどを飼育している試験のようすも視察していました。

 グロッシ事務局長「課題として特に認識しているものはない」

 福島第一原発の視察を終えたIAEAのグロッシ事務局長は「処理水の計画について課題として特に認識しているものはない。全体的に見て必要な要素がすべてそろっているので、日本政府が決定に至れば、それに従って放出が実施されると考えている」と述べました。
 また、国内外で風評への懸念があることについては「懸念について耳を傾け、計画について十分な根拠というものを示し、わかりやすく説明を行う。こうしたことを地道に続けていくことによって、時間はかかるかもしれないが徐々に理解は得られると信じている」と述べました。

 規制委 東電に検査終了証 7日に交付へ

 福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、原子力規制委員会は東京電力に対し、放出設備の性能を確認する最終段階の検査に合格したことを示す終了証を7日に交付する方針を示しました。
 東京電力は、福島第一原発にたまるトリチウムなどの放射性物質を含む処理水について、政府の方針に従ってことし夏ごろまでに基準を下回る濃度に薄めて海への放出を始める計画です。
 先月には放出設備の工事が完了し、原子力規制委員会が、設備全体の性能を確認する最終段階の検査を行っていました。
 5日の規制委員会の会合で検査の結果が報告され、処理水を薄めるために大量の海水を取り込むポンプやトラブルの際に放出を止める「緊急遮断弁」、それに海底トンネルといった設備の性能に問題はなかったということです。
 そのうえで、7日に東京電力に対し検査に合格したことを示す終了証を交付する方針を示しました。
 これで、放出に必要な設備面での準備はすべて整う見通しになりました。
 処理水を薄めて海に放出する計画をめぐっては、IAEA=国際原子力機関が4日「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表していて、政府はこうした内容などを国内外に説明したうえで、夏ごろとしている放出開始の具体的な時期を最終判断する方針です。

 規制委 山中伸介委員長「厳正な監視を続けたい」

 福島第一原発にたまる処理水を薄めて海に放出する計画についてIAEA=国際原子力機関が、原子力規制委員会も含めた日本の対応を「国際的な安全基準に合致している」と評価する報告書を公表したことについて、規制委員会の山中伸介委員長は「中立的かつ専門的な機関であるIAEAに、規制の取り組みについても評価されたことは非常に意義のあることだ。規制委員会が認可した計画どおりに放出されれば人や環境に対する影響も極めて小さいという評価も受けたので、規制の取り組みに関する情報発信を国内外に丁寧に行いたい」と述べました。
 そのうえで、今後について「処理水の放出はとても長い期間にわたるので、放出施設に劣化が生じていないかや運用上のミスかないかなど検査などを通して確認し、計画にそった放出が確実にされているか厳正な監視を続けたい」と話していました。

 官房長官 処理水放出“状況を確認し時期判断”

 福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、松野官房長官は、夏ごろとしている放出開始の具体的な時期について政府全体で安全性の確保や風評対策の取り組みの状況を確認したうえで判断する考えを改めて示しました。
 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、IAEA=国際原子力機関は4日「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表しました。
 これについて松野官房長官は午前の記者会見で「報告書の結論を踏まえ、海洋放出について引き続き科学的根拠に基づき、高い透明性を持って内外の関係者に丁寧に説明していく」と述べました。
 そのうえで、放出開始の時期について「ことし春から夏ごろを見込むという方針に変更はない」と述べ、政府全体で安全性の確保や風評対策の取り組みの状況を確認したうえで、具体的な時期を判断する考えを改めて示しました。
 一方、IAEAの報告書に対し、中国側が「すべての専門家の意見を十分に反映できていない」などと反発していることについては「IAEAは独立した第三者の立場から科学的根拠に基づいた評価を行った。今後とも日本の立場を丁寧に説明し、理解が深まるよう努力していく」と述べました。

 中国外務省 日本をけん制

 東京電力福島第一原子力発電所にたまる処理水を薄めて海に放出する計画をめぐり、IAEA=国際原子力機関が公表した報告書について中国外務省は「食品の安全や健康への長期的な影響が証明されていない」として、今後、日本から輸入する海産物の検査を強化する方針を示し、日本をけん制しました。
 福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐり、IAEAは4日「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表しました。
 これについて、中国外務省の汪文斌報道官は5日の記者会見で「データの真実性や正確性が証明されていないうえ、食品の安全や健康への長期的な影響も証明されていない」と述べ、改めて懸念を表明しました。
 そして「報告書は日本の国内外で広がる放出計画への強烈な反対の声を抑えることができなかった」として、中国の国民も強い懸念を抱いていると強調しました。
 そのうえで、今後、中国の関係部門が海洋環境のモニタリングのほか、日本から輸入する海産物の検査や検疫を強化する方針を示し、日本をけん制しました。

 韓国政府 “IAEAの報告書を尊重”

 福島第一原発にたまる処理水を基準を下回る濃度に薄めて海に放出する計画をめぐりIAEA=国際原子力機関が「国際的な安全基準に合致している」とする報告書を公表したことについて、韓国政府は「報告書を尊重する」としたうえで、韓国が独自に行った現地視察などを踏まえ最終的な見解を公表すると明らかにしました。
 韓国政府は5日の記者会見で「IAEAは国際的な権威ある機関であり、その決定を尊重するという政府の基本的な立場は以前から話してきたし、今回も同じだ」と述べ、4日公表されたIAEAの報告書を尊重するという立場を示しました。
 そのうえで、韓国の専門家がことし5月に行った福島第一原発での視察などを踏まえ、独自に進めている分析結果をできるだけ早くとりまとめて最終的な見解を公表すると明らかにしました。
 韓国では処理水の放出に対する懸念が大きく、最大野党・共に民主党の幹部は5日「IAEAの検証は不十分であり信頼できない」などと激しく反発しています。
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