[2023_06_30_01]東電福島第一原発汚染水(ALPS処理水)海洋投棄について 懸念を示す6/26太平洋諸国フォーラムの声明文 (上) 「我々の国民は日本の計画から得るものは何もないが、これから 何世代にもわたって危険にさらされる恐れが大きい」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)(たんぽぽ2023年6月30日)
 
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東電福島第一原発汚染水(ALPS処理水)海洋投棄について 懸念を示す6/26太平洋諸国フォーラムの声明文 (上) 「我々の国民は日本の計画から得るものは何もないが、これから 何世代にもわたって危険にさらされる恐れが大きい」 山崎久隆(たんぽぽ舎共同代表)

 東電福島第一原発から放出されようとしている汚染水(ALPS処理水)に対して、既に以前から懸念と反対の姿勢を示してきた太平洋諸国フォーラムは6月26日、海洋投棄について懸念を示す声明文を発表しました。以下に声明文の訳を紹介します。

 声明 太平洋諸島フォーラム事務局長ヘンリー・プナ
   福島の処理された核廃液について
                      2023年6月26日

 ◎ 太平洋諸島フォーラム(PIF)は、核汚染の潜在的な脅威が、ブルーパシフィック、その国民及び将来の健康と安全に及ぼす重大性についての強い懸念に対処するため、引き続き全力を尽くす。
 日本が2021年4月に決定を発表する前にも、2020年12月に南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)の締約国として初めて会合を開いた太平洋諸国は、「2011年の福島第一原発事故による環境への影響に対する懸念を想起し、日本に対し、太平洋に及ぼすあらゆる潜在的な被害に対処するのに必要な、あらゆる措置をとるよう」要請した。

 ◎ また、「各国に対し、国際法で義務付けられているように、他の国の領域への重大な、国境を越える被害を防ぐために、自国の領域、管轄権または管理の範囲内であらゆる適切な措置を講じるよう」要請した。
 これらの重要な声明は、太平洋諸国を対象としているラロトンガ条約によって課せられた「投棄を禁止する」という独特の義務(第7条)を含む主要な国際的な法的規則と原則に由来しており、これは、我々の核実験の負の遺産と、それが我々の国民の健康、環境、人権に永続的な影響を及ぼしていることを考慮したものである。

 ◎ そのため、太平洋諸国は「いかなる者による放射性廃棄物およびその他の放射性物質の投棄も防止」し、「南太平洋非核地帯内のいかなる場所においても、いかなる者による放射性廃棄物およびその他の放射性物質の海上への投棄を援助または奨励するいかなる行動もとらない」という法的義務を負っている。
 核汚染問題に関するフォーラムの具体的な懸念は新しいものではない。長年にわたり、フォーラムは他の国々による核廃棄物の太平洋への投棄の試みに取り組む必要があった。

 ◎ 首脳らは日本や他の海洋国に対し、「核廃棄物を太平洋に貯蔵したり投棄したりするのではなく、自国で貯蔵したり廃棄したりするよう」求めている。1985年には、日本の首相(訳注;中曽根康弘)が「地域社会の懸念を無視し、放射性廃棄物を太平洋に投棄する意志は全くなかった」と発言したことをフォーラムは歓迎した。
 この地域的背景に対して、現在の前例のない問題に対するフォーラムの関与は、我々のブルーパシフィックにとって、これが単なる原子力安全問題ではないことを示している。

 ◎ むしろ、核の負の遺産問題であり、海洋、漁業、環境、生物多様性、気候変動、そして私たちの子供たちと将来の世代の未来をかけた健康問題である。
 我々の国民は日本の計画から得るものは何もないが、これから何世代にもわたって危険にさらされる恐れが大きい。
 この目的のために、科学的な議論は、現在の科学的発展に留意し、すべての太平洋諸国を含むこれらの基準について法的拘束力のない性質にも留意しつつ、福島の事例に対する現在の国際的な原子力安全基準の適切な適用と妥当性の検討につながった。

 ◎ ここで重要なのは、この問題が重大なのは、国境を越え世代を超えた影響の問題だからであり、意図的かつ一方的に大量の核廃棄物を海洋に投棄する前例を作る可能性があることである。
 これ自体が、新たな「核実験」活動で、太平洋島嶼国に耐える必要のない大きな影響と長期的な懸念をもたらしている。
 海洋投棄の代替手段を含む新しいアプローチが必要であり、それが責任ある前進の道である。

 ◎ 実際、前進するためには、特に影響を受ける国々との包括的な国際協議が必要であり、IAEAの枠組みだけでなく、1982年の国連海洋法条約や廃棄物等の投棄による海洋汚染の防止に関するロンドン条約・議定書など、海洋および海洋環境保護に関する権限を持つ他の関連する枠組みを通じて行われるべきである。
 ちょうど今週、私たちはBBNJ「国家管轄権外区域における海洋生物多様性」による成果を祝い、経済的、生態学的、文化的価値のある生物資源のために太平洋の健康を守る1982年の国連海洋法条約の成功を振り返った。

 ◎ 私たちは、この問題に関して、科学的にも、政治的にも、そして公的にも、意見の相違を耳にし続けている。これは、この問題に対する世界的な関心の高さを示している。
 太平洋諸島フォーラム(PIF)の独立した科学専門家委員会は、日本やIAEAの専門家のみならず、原子力、放射線、高エネルギー物理学、海洋環境科学、海洋学、海洋放射性化学など幅広い分野のグローバルな専門家として、日本やPIF首脳、より幅広いステークホルダーとの対話を続けている。私の考えでは、この問題について全員が共通の理解を得るためには、より多くの作業と対話が必要であることは明確だ。

 ◎ したがって、より多くの時間と十分な注意(予防原則)は、2021年7月の日本との第9回太平洋・島サミット(PALM9)以来、太平洋首脳によって強調されてきたように、国際協議、国際法、独立した検証可能な科学的評価を通じて、継続的に関与するために非常に重要である。
 私は、岸田文雄首相がフォーラムの議長及び首脳に対し、ALPS処理済みの廃水を排出するのは、検証可能な安全性が確保され、かつ、信頼と友好の精神に基づいて、全ての関係者が合意するまでは行わないと確約したことに、今も心強く思っています。

 (下)に続く訳文作成 山崎久隆※≪事故情報編集部≫より 「声明の原文」URL、太平洋諸島フォーラムの紹介・加盟国、 声明文の最後に出てくる岸田首相との「約束」については(下)に 掲載します。
KEY_WORD:汚染水_:FUKU1_: