[2023_06_26_01]原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電力会社など事業者のツケを私たちに回すための法案 2.ウソ偽りの立法事実 3.具体的な規則・基準は何もできていない 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その3)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2023年6月26日)
 
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原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 電力会社など事業者のツケを私たちに回すための法案 2.ウソ偽りの立法事実 3.具体的な規則・基準は何もできていない 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その3)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)


 2.ウソ偽りの立法事実

 この法案がどれだけ拙速で異様か、国会審議でも次々に明らかにされた。
 60年運転制限(本当は40年制限)を、原子炉等規制法から電気事業法に移す根拠について経産省は、原発利活用を行う立場から運転期間を定めるのが元々の考え方としたうえで、規制委が高経年化技術評価を行い運転可能であるとの審査を経なければ動かせないから、安全性の確認は規制委で十分出来るし、従来と変わらないと主張する。

 ならば、安全規制の観点から炉規法に40年としてきた規制を電事法に移す理由はどこにあるのか。これでは立法事実が存在しない。原発の長期運転で電源確保という考え方が立法事実としてあるのだが、それでは安全側に立った規制にはならない。炉規法のままだと規制委が60年超えの根拠を与えることになるので、大幅な後退であることが明らかだから炉規法から外すことにした。

 規制委は山中委員長が「運転期間については利活用側の決めること」などと、安全規制とは関係ないかの発言を繰り返したが、これもまた立法事実として炉規法を2012年に改訂した際の考え方からかけ離れている。
 炉規法を改定した際に運転期間を40年とする制限を盛り込んだのは、「経年劣化等により安全上のリスクが増大することから、運転することができる期間を制限」するためとされていた。
 ようするに電気事業者側が長期運転停止してきた原発を動かしたとしても、最大60年の制限にかかれば利益を生み出す期間が限られるので、できる限り「使い倒したい」と考えてきたことへの、行政のなりふり構わぬ「規制緩和」の結論が先にあったということだ。

 その結果、相対的に原子力災害や長期運転停止による電力ひっ迫などの影響は、国民や消費者がかぶる確率が高くなった。
 これは電力会社など事業者のツケを私たちに回すための法案だ。国がどっちを向いて仕事をしているのか明白だ。
 決して「グリーン」でも「クリーン」でもない。
 放射能まみれの汚染物を海に投棄し続け、その被害を全世界の人々につけ回すのと同根である。

 3.具体的な規則・基準は何もできていない

 60年を超えて運転する規定を電事法に定めたものの、具体的な期間計算については全く示されていない。
 これらは今後策定される規則や基準で定められるが、その内容については今後審議会等で議論して決めるという。またしても原子力ムラのお手盛りだ。
 法案は延長可能期間の計算さえ正確にはわからないまま、骨格だけが審議されていた。
 規則や実施基準を示して、そのような延長を認めて良いのか、その基準では安全上重大な問題にならないかも含めて議論ができなければ、規制の妥当性の議論もできない。

 規則や基準は国会での議決を要しない。経産省が省令などで決めてしまう。問題点も深まらない。こんなやり方は民主的ではない。独裁国家のやることだ。
 この法律は、一般的な行政法の改訂ではない。未曾有の災害を引き起こした原子力の将来をどうするかを決める法律だ。
 今だけでなく未だ生まれてもいない未来の人々へも大きな影響を与える。国民投票するべきテーマである。
 また、一度走り出したら容易に変えられない。
 そんな法律を熟慮もせずに決める、この国の危うさを多くの人は気づいてさえいないのだ。 (その4)に続く
KEY_WORD:原発_運転期間_延長_: