[2023_06_23_01]原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 「5/31は取り返しのつかない悪法が成立した日…」 1.いま作るべきは「脱原発電源法」 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その2)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)(たんぽぽ2023年6月23日)
 
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原発推進GX法が成立しても止められる 原子力推進の矛盾はむしろ拡大 「5/31は取り返しのつかない悪法が成立した日…」 1.いま作るべきは「脱原発電源法」 6/17山崎ゼミの資料紹介 (その2)(連載) 小山芳樹(たんぽぽ舎)

 2023年5月31日、この日は後年に、取り返しのつかない悪法が成立した日として未来の世代に記憶されるのかもしれない。

◎ GX原発推進法、実際の名称は「脱炭素電源法」が参議院で可決成立し、2011年福島原発震災以来の国の方針であったはずの「原発依存からの脱却」が「原発依存への転換」と、大きく変わった。
 このように言うと、政府、原子力推進派は「第六次エネルギー基本計画(以下エネ基)にも2030年の電源構成は原発が20から22%としているから変わらない」などと反論する。

◎ しかし第六次エネ基には同時に「可能な限りの原子力依存からの脱却」とも書いており、その方針を大転換したことは紛れもない事実である。(*)
 (*)具体的には「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、2050年カーボンニュートラルや2030年度の新たな削減目標の実現を目指すに際して、原子力については安全を最優先し、再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」(7P)
 「東京電力福島第一原子力発電所事故を経験した我が国としては、安全を最優先し、経済的に自立し脱炭素化した再生可能エネルギーの拡大を図る中で、可能な限り原発依存度を低減する。」(26P)

 「電力供給部門については、S+3Eの原則を大前提に、徹底した省エネルギーの推進、再生可能エネルギーの最大限導入に向けた最優先の原則での取組、安定供給を大前提にできる限りの化石電源比率の引下げ・火力発電の脱炭素化、原発依存度の可能な限りの低減といった基本的な方針の下で取組を進める。」(106P)と3カ所に書かれている。

◎ 現状が6%程度を、2030年に20%程度にするわけだから依存度が増大するはずが、低減というのだから、2030年以降を念頭に置いたものと考えるほか無い。
 なお、2010年の電源構成で原子力は25%であり、ここからの低減という意味にも取れない。「可能な限りの低減」とはいったい何だったのか、再び問われることになる。

◎ GX原発推進束ね法の構成は「原子力基本法」「電気事業法(電事法)」「原子炉等規制法(炉規法)」「再処理法」「再エネ特措法」の5つの改正を柱にした、原子力拡大のための法律だ。
 国会では、自民、公明のほか、維新、国民民主などが賛成した。
 賛成議員には、これから原子力災害に対する重い責任がかかってくることはもちろん、今後原発の長期停止による電力ひっ迫が発生した責任もあることを指摘する。
 これほど不安定かつ、停止しやすい原発に大電力を依存することの危険性は、東日本大震災や中越沖地震などで常に実証され、議論されてきたのだから。

1.いま作るべきは「脱原発電源法」

◎ 2011年3月11日の原発震災で福島県を中心に甚大な被害が発生した。
 地震や津波災害は、人間の手でできることは限られており、防災の目的は主に人的被害の低減に置かれている。
 しかし原発は、それを作らないことが最大の防災である。
 福島第一原発事故は紛れもない人災だ。
 原発震災では、多くの人々に長期間の避難を余儀なくさせ、今も避難生活を強いられる3万人もの人々がある。

◎ 帰還困難区域という名の汚染地帯が広がる福島県。その後遺症も重いところに、さらに汚染水放出など、現在の政府は被災者を切り捨て、さらに忘れさせようとする政策を鋭意遂行中だ。
 原発依存を急速に進めようという政策に対し、福島では多くの人々が強く反対しているのは当然だ。

◎ 原発をなくしたらどこから代替電源を用意するのかなどと批判するものもあるが、現在の火力を高効率化し、同じ燃料で5割増しの発電をする技術は存在する。
 今後も火力に依存すると環境負荷や価格の不安定さが問題になる。二度のオイルショックはその典型だし、政情不安定な国からの調達を余儀なくされていることも事実だ。
 従って、当面は火力の高効率化と電源の分散を図り、多くの投資は原発と火力を代替するエネルギー源を開発することに投じなければならない。
 しかし12年間、ほとんど無策だった。

◎ 電力11社の原発安全対策費の合計は、2023年1月時点で6兆890億円以上になると、共同通信(3月9日付け)が報じている。
 この12年間での無駄な投資に加え、これからも巨額の投資を原発に続ける法律の制定は、この国を原発依存の奈落に突き落とすことになる。
 作るべき法律は、「脱原発電源法」だった。 (その3)に続く
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