[2023_06_20_02]改正活火山法 軍拡予算は火山、地震、水害など自然災害対策に振り向けるべき 前川喜平 (現代教育行政研究会代表)(東京新聞2023年6月20日)
 
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改正活火山法 軍拡予算は火山、地震、水害など自然災害対策に振り向けるべき 前川喜平 (現代教育行政研究会代表)

 活動火山対策特別措置法(活火山法)の改正法が14日の参議院本会議で可決・成立した。
 火山の観測や調査研究を一元的に担う「火山調査研究推進本部」が文部科学省に設置される。
 文科相を本部長とし、火山に関する総合的な調査観測計画を策定。関係行政機関の調査研究予算の調整も行う。
 8月26日を「火山防災の日」とすることも定められた。改正法は来年4月に施行される。
 立憲主義に背き、国民の信託を裏切る法律が次々に成立した今国会にあって、全会一致で成立したまともな法律だ。
 火山列島の日本では、常にどこかで火山が噴火する危険性が存在する。
 火山の噴火は人間の力で制御できない。宮沢賢治の童話「グスコーブドリの伝記」では主人公が冷害を食い止めるために人工的に火山を噴火させるのだが、二十一世紀の今日においても賢治が思い描いた人間による自然の制御は実現していない。
 戦争と火山噴火。我々はどちらを恐れるべきなのか。
 その答えは明らかだ。戦争は人間が起こすものだから人間が防ぐことができる。
 火山噴火は自然が起こすものだから人間が防ぐことはできない。
 できるのは調査、研究、観測、予知の努力を通じて災害に備え、被害を最小限に食い止めることだ。
 軍拡予算はそっくり火山、地震、水害などの自然災害対策に振り向けるべきなのである。
 (6月18日「東京新聞」朝刊23面「本音のコラム」より)
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