[2023_06_19_02]原発処理水の海洋放出で「風評起きる」は87% 懸念払拭されず 福島県民世論調査(福島民友2023年6月19日)
 
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原発処理水の海洋放出で「風評起きる」は87% 懸念払拭されず 福島県民世論調査

 福島民報社は福島テレビと共同で第41回福島県民世論調査を実施した。東京電力福島第1原発の放射性物質トリチウムを含む処理水の海洋放出に伴い「大きな風評被害が起きる」「ある程度起きる」との回答は合わせて87.8%に上り、3月の前回調査の計90.5%とほぼ同じ傾向となった。海洋放出する政府方針への国内外での理解度については「広がっている」との答えが初めて過半数となったが、政府が放出開始目標とする「夏ごろ」が迫る中、新たな風評の発生に対する県民の懸念は依然として払拭されていない現状が鮮明となった。
 処理水の海洋放出に伴う風評被害に関する回答結果は、「ある程度風評被害が起きる」が55.7%(前回調査比0.7ポイント減)と最も多く、「大きな風評被害が起きる」が32.1%(同2.0ポイント減)だった。「ほとんど風評被害は起きない」は8.1%(同1.2ポイント増)、「全く風評被害は起きない」は0.7%(同1.8ポイント減)だった。「わからない」は3.4%だった。
 夏ごろの海洋放出を目指す岸田内閣を支持する回答者のうち「ある程度風評被害が起きる」としたのは62.8%、「大きな風評被害が起きる」は19.5%で合わせて82.3%に上った。内閣を支持しない回答者のうち「ある程度風評被害が起きる」は51.7%、「大きな風評被害が起きる」は40.9%で計92.6%。内閣の支持、不支持に関わらず、風評被害発生への懸念が根強い。
 海洋放出や処理水の安全性に関する政府や東電の説明に関する回答結果は、「十分ではないと思う」が最多の66.5%で前回調査から1.3ポイント増えたのに対し、「十分だと思う」は15.8%で前回から1.3ポイント減った。「わからない」は17.6%だった。
 処理水を海洋放出する政府方針への国内外での理解度に関する回答結果は、「かなり理解が広がっている」は14.1%(前回調査比1.4ポイント増)、「少しは理解が広がっている」は35.9%(同7.8ポイント増)で合わせて50.0%となり、項目を設定した昨年3月の第36回調査以降、初めて過半数となった。ただ、「全く広がっていない」が11.3%(同0.4ポイント減)、「あまり広がっていない」が33.3%(同5.6ポイント減)で計44.6%に上り、理解の広がりにはいまだ限定的な側面が残る。「分からない」は5.3%だった。
 処理水の海洋放出に向けて政府は、月末にも公表される国際原子力機関(IAEA)の安全性に関する包括報告書を論拠に、国内外での情報発信や地元の関係者に理解を求める方針だ。東電は月末までに放出関連工事を完了する見通しで、放出に向けた手続きは最終局面を迎えている。
 一方、国内外の原発でトリチウムを含む水が海洋放出されている現状をはじめ、処理水の放射性物質濃度を基準値以下に薄めた上で放出する手法、県産農林水産物の安全性確保の取り組みなどが消費者に十分に広がっていないとする県民の声は依然として多い。
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