[2023_06_16_02]送配電の資本分離、政府検討 供給懸念で実現は不透明(日経新聞2023年6月16日)
 
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送配電の資本分離、政府検討 供給懸念で実現は不透明

 政府は16日、大手電力と送配電事業を担う子会社の資本関係を解消する「所有権分離」を検討することを規制改革の実施計画に盛り込んだ。顧客情報の不正閲覧の問題を受け、経済産業省が導入の妥当性を検証する。安定供給への影響を懸念する声も強く、実現するかは見通せない。
 16日に実施計画を閣議決定した。経産省が2023年度中をめどに導入の是非を判断する。
 大手電力は大きく発電、送配電、小売りの3部門で構成される。発電した電気を各地に届ける送配電部門の多くは、発電部門を持つ電力大手の子会社になっている。
 大手電力の不正閲覧では、複数の大手電力の社員が送配電子会社のシステムに接続して競合他社にあたる新電力の顧客情報を入手した。所有権分離は各部門の独立性を高めて不祥事を防ぐ狙いがある。
 規制改革の実施計画には送配電の所有権分離について「必要性や妥当性、長所・短所を含めて検討する」と明記した。
 ただ経産省は大手電力の安定供給にリスクが生じるとして送配電子会社の完全分離案に強く反対している。
 西村康稔経産相は16日の記者会見で、所有権分離は電力会社の資金調達や財産権の観点で影響があると指摘した。「災害が起きたときの対応など留意すべき課題もある」として慎重に検討する考えを示した。
 経産省は不正閲覧やカルテルの問題を受けて再発防止策を講じる。大手電力と送配電子会社のシステムの遮断や、大手電力が競合する新電力に対して不利な価格で電力を販売しないよう徹底する仕組みの導入などが柱になる。
 電気事業連合会の池辺和弘会長(九州電力社長)は16日、「事業者の立場では災害対応や安定供給でのメリットを考えるとグループ内で協力しあう方が効率的だ」と訴えた。
 電気事業法は大手電力や新電力との間の競争環境を公正に保つため、送配電子会社が保有する顧客情報を大手電力と共有することを禁じている。経産省は違反した企業に対する行政処分や罰則の強化なども検討する。
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