[2023_05_31_03]原発運転「60年超」可能に GX電源法が成立(日経新聞2023年5月31日)
 
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原発運転「60年超」可能に GX電源法が成立

 原子力発電所の運転期間の60年超への延長を盛り込んだGX(グリーントランスフォーメーション)脱炭素電源法は31日の参院本会議で可決、成立した。既存の原発を可能な限り活用し、電力の安定供給と温暖化ガスの排出削減を目指す。
 GX電源法は電気事業法や原子炉等規制法、原子力基本法など5本の関連法の改正をひとつに束ねた。2011年3月の東京電力福島第1原発事故後の原子力政策を転換する内容となっている。
 事故後に日本は「原則40年、最長60年」という運転期間を定めた。その枠組みは維持しながら、安全審査や裁判所の命令など事業者が予想できない理由による停止期間を除くことで事実上、60年超の運転が可能となる。
 運転期間についての規定を原子炉等規制法から削除し、経済産業省が所管する電気事業法に移す。政府の原子力規制委員会が安全審査する体制はかえないが、経産省が脱炭素と電力の安定供給に資すると判断した場合に延長する仕組みにする。
 安全規制に関しては30年を超えて運転する原子炉について、最長10年ごとに劣化状況を評価し、認可を受けることを義務付ける。規制委は運転開始から60年超の原発の審査について、40年目の特別点検と同じ項目の追加点検を実施する。
 原発を活用して電力の安定供給や脱炭素社会の実現につなげることを「国の責務」と明確に位置づける。人材育成や技術開発のために必要な産業基盤を維持・強化する方針も明記した。
 同法を巡っては自民、公明、日本維新の会、国民民主の4党が衆院通過前に規制委の審査の効率化を求める文言を付則に加えた。
 原発の立地地域だけでなく「電力の大消費地である都市の住民」の信頼を確保し、協力を得ることを国の責務とする内容も修正して盛り込んだ。

 竹内純子
 国際環境経済研究所 理事・主席研究員

 ひとこと解説

 原子力の運転期間の話ばかりが取り上げられますが、実は、運転開始から30年以降は、10年以内毎に点検を受けることを義務付けるという長期運転に係る規制強化(原子炉等規制法)も行われています。そもそも、設備の寿命は当初の導入技術や設置条件、メンテナンスや使用条件によって大きく異なるため、一律に定めることは困難です。車検に合格すればどんなクラシックカーでも走行可能であることが良い例。諸外国でも、運転期間を定める例は無く、定期的に検査を行って健全性が確認されれば運転継続を認めるという仕組みです。今回の改正は運転期間の定めを置く構造はそのままで、審査期間の長期化等による停止期間を除くというものです。
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